お守り編1話 ページ2
雪宮side
昂輝「本格的に寒くなってきたので、マフラーを編んでみました。…アライヌくんに」
ふわっと笑って私に差し出したのは水色の小さな手編みのマフラー。コウ曰く、アライヌくんにどうぞ。とのこと
昂輝「本当は寒がりなAさんにマフラーを作りたかったんですが」
『その気持ちだけで温かいよ』
ありがとう、とマフラーを受け取ってバッグに大量に付いているアライヌくんのうちの1匹(コウキ)に付けてあげる。可愛い
昂輝「後で他の子のも作りますね」
『ふふ、そんなに作るのか?』
昂輝「はい。…Aさんに似て、寒がりかもしれませんし」
優しい瞳で私を見下ろすコウにいつも安心してしまう。彼は、どうしてこんなに優しいのだろう
昂輝「…いつも思うんですが」
『?』
昂輝「Aさんのバッグにはどうしてそんなについているんですか?」
私から私のバッグへ視線を落とすコウを見て、私も自分のバッグを見た。バッグにはコウ、ケン、リョウ、衛と始のアライヌとツキウサが付いている。
『これは…大切なもらい物だから。お守り』
昂輝「お守り…」
最初は始のツキウサさんだけだった。
・
これは…何年前だったか。始が社長にスカウトされて、同じツキプロに入った時のこと。
『始!待て。お前…』
始「俺が何しようが勝手だろ。ほっとけ」
『ばか、なんで…』
なんで同じ道を辿るの。当時精神的に追い込まれていた私にとって、始が同じツキプロに入った事でさらに不安になり、しばらくは顔を合わせる度口喧嘩をしていた。
『私は心配なんだよ、なんで、よりによって…』
始「A、いい加減にしろ。頭冷やせ」
『始だってわかってるでしょ!?お願いだから…』
始「引き下がらない。とことんやるって決めたからな。…邪魔するならAだろうが…」
志季「こら、またやっているのか」
当時の私と始の喧嘩を知っていたのはほんの一部の人たち。志季さんや春くん、隼とか…まぁその辺で、年中、年少組は私が始の義理の姉、親戚同士であることすら知らなかった。
『…なんで、始が…』
春「Aさん、始が決めたことだし…見守ってあげたら?俺も居ますし…ね?」
『……始には、あんな想いさせたくない』
これは私が表舞台から姿を消して1年も経たないくらいのこと。あまりにも急すぎて、不安で、心配で…ものすごく、怖かった。
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作者名:雪藤 | 作成日時:2019年11月1日 19時