湯たんぽと抱き枕《桜庭涼太》 ページ40
｢こら、逃げないの｣
『ぐうっ……これはなんの罰ですか…！』
｢…？ご褒美でしょ、なに寝惚けているの｣
寝惚けているのはどちらだろうか。めっちゃ寒い冬の夜に、冷え性に抱きしめられて…氷のように冷たい手足が温かさを求めるように私の肌に直接触れた。
『…！！つ、め、たいっ…』
｢動かないでよ…もう…｣
パジャマの中に侵入してくる冷たい手は、逃がさないと言いたげに腰をしっかりと掴んでくる。…何故こうなったのか、きっかけは私の一言だった。
｢そんなに冷えるなら湯たんぽを使えばいい…だっけ？俺はAの言う通り湯たんぽで温まってるんだけど？｣
『いや、私は湯たんぽじゃない、しっ！？』
｢ん…湯たんぽでもないのに、Aの身体は温かいね？｣
『眠いからね。…あとリョウの手冷たすぎ、それから…っ』
｢それから？｣
『そ、れから…その……触りすぎ…』
｢…へぇ、どこを？｣
『…っ』
どんどん移動していく冷たい手が、私の身体を撫でている。心臓から遠いところから触ってるのは彼なりの気遣いかもしれないけど、どんどん心臓…というか胸元に近付いてるのが恐ろしい
『こ、殺す気…？』
｢まさか。湯たんぽであり抱き枕でもあるかわいい恋人を愛でてるだけだよ｣
『私は湯たんぽでも抱き枕でもありません。湯たんぽが欲しいなら作ってあげるから…っん…！？』
｢ん、っ……ここに半永久的に温かい湯たんぽがあるんだから、わざわざ作らなくても｣
『…………もう寝る』
｢どうぞ？…眠れるものなら、ね｣
『…。……おやすみ、リョウ』
お返しも兼ねて唇を重ね合わせ、ふいっと背を向けて目を閉じる。少しして、後ろでもぞもぞ動く気配があった後、また服の中に冷たい手が入ってきた
『…！？』
｢温めて？A…冷えて眠れない｣
『…リョウ…』
｢Aなら…俺の心も身体も、温めてくれるよね？｣
『……え』
後ろからぎゅっと抱きしめられながら囁かれた声に、身体がこわばった。眠たい私とは正反対で、リョウは元気らしい。
『待って、私は…』
｢大丈夫、寝落ちても気絶しても…愛してるからね？｣
『どういうことだよ』
｢明日休みだし…付き合ってくれるよね？｣
『……お、お手柔らかに…』
平和に湯たんぽや抱き枕として、大人しくしていればよかったのかな…？そんなことを思いながら、ぎゅっと抱きついてくるリョウの頭を撫でるのでした。
ナビはお任せ！《八重樫剣介》→←ただ、あなたの為に《桜庭涼太》
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪藤 | 作成日時：2019年10月25日 19時
