続き ページ36
「…い、おーい、A…?」
『…ん…?』
少しだけ目を閉じたつもりだったけど、ぐっすり眠っていたみたい。ゆっくり目を開くと縁側から家の中に移動していて、座布団を枕代わりにして横になっていた
「やっと起きたか、俺よりぐっすり寝てんじゃん」
『………誰』
「え。俺だよ、ケンだよ」
耳と尻尾がない普通の人間の姿のケンが、私の上に覆いかぶさっている。起き上がりたいのにケンがいるから起き上がれない
『…もふもふじゃなくなっちゃった…』
「悪かったな、もふもふじゃなくて」
『それより、もう起きたから…どいてくれる?』
「んー…どーしよっかなぁ」
『…?どうして悩むの?座った方が楽でしょう?』
「そりゃ悩むよ!こんなにアピールしてるのに…Aは全然気付いてくれないし…」
『?』
「ほんとは独り占めしたいのに…A、動物達にすごい好かれてるし…」
『??』
「そもそも、俺の事なんだと思ってる?」
『…?……ケンは犬神様でしょ?可愛いわんちゃんみたいなところあるけど』
「……男として、見られてない…」
『どうしたの…?』
「こ、この状況どう思う?ドキドキしたり…」
『起き上がりたいから、早くどいてもらえるとありがたい…かな?』
「ぐっ…ドキドキしてもらえてない!」
『ケン?落ち着こう?』
私に覆いかぶさったまま落ち込むケンの頭を撫でると、ケンはそのままぎゅっと私に抱きついてきた
「…好き、なんだよ。Aを、ひとりの女性として」
『…え』
「ずっと、好きで…だから、いつも撫でてほしいって言ってお前に会いに行ってた」
『そう…だったんだ…』
「…でも、今のままじゃダメだ。俺も男だってこと…ちゃんとAに分かってもらいたい!」
『え?いや、そのくらい…』
「わかってない!…ん…」
『…!?や、くすぐったい…』
頬に口付けたケンが、首筋をぺろっと舐めて甘噛みをしてきた。逃げたくても、両手をしっかりケンに押さえつけられている
「もう…可愛いわんちゃんとは言わせない」
『っ…』
「忘れないで。俺は…お前を、Aを狙ってる狼だってこと」
『…』
初めて見たケンの獣みたいな目は…ものすごく怖い。けど…
『大好きなケンになら…食べられてもいい』
「…っ……ずるい…、ん…」
噛み付くような口付けをしてくるケンだけど、耳まで真っ赤なところはやっぱり可愛い。
…一体どっちが、本当のケンなんだろう
逆らえないんです。《衛藤昂輝》→←彼は犬か、狼か《八重樫剣介》
47人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪藤 | 作成日時:2019年10月25日 19時