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先手必勝《桜庭涼太》 ページ28

☆Aさんはリョウくんの彼女さん

『ねぇ、リョウ?なんで貴方がキッチン占領してるのさ』

「別にいいでしょ、大人しく座ってて」

今日はバレンタインデー。毎年Aがチョコをくれるから、今年は俺からあげたくなった。だから、キッチンを占領している。

『…料理、出来るの?』

「……人並みに、かな」

上手とは言えないけれど、これはコウと練習した。だから…多分、出来るはず

『…クッキーかぁ…型抜き、私もやりたい!』

「…!」

いつの間にか隣にいたAが、可愛らしい顔で見上げてくる。まぁ型抜きだけなら…と言うと、やったぁと彼女は嬉しそうに笑った。

「…かわいい」

『?何か言った?リョウ』

「なにも?…さ、型抜きやろうか」

生地を伸ばして二等分にしようとすると、自分の手にAの小さな手が重なる。何事かと彼女を見ると、彼女はだめと言わんばかりに首を振った。

『このまま、1枚にして一緒にやろ』

「それじゃあ狭くない?」

『共同作業っぽいでしょ?』

「…!なるほどね、わかった」

えへへ、と楽しそうな笑みを浮かべながら型抜きをする彼女を見ていると、すごく癒される。しばらく黙って眺めているうちに少し…触れたくなった

「…A」

『?な…っん』

「ん…かわいいね、Aは」

『!!そ……そんな、こと…。…ありがと』

照れてる、顔が真っ赤だ。そんな可愛らしい彼女を眺めていると、視線に気づいた彼女が『見ないでー!』と顔を覆った。

『そっ、それより…クッキー作ろ?』

「ふふ、はいはい」

・・・

「はい、完成」

『わぁ…美味しそう!』

出来たてのクッキーを少しだけ冷ましてからAの口元に運ぶと、彼女は嬉しそうにぱくりと食べた

『おいしい!リョウも食べて?』

「うん。じゃあ…遠慮なく」

『え?な、なんでこっちに…っ!?』

Aの口にもう一度クッキーを入れて、彼女の腰を抱いて唇を重ね合わせる。…やってから思った、チョコにすればよかった

『ん、んー!』

「ん…おいしいね」

『〜っ…おいしいけど!おいしいけどさ!!』

「クッキーのお礼は、Aでいいからね?」

『!?まさか…その為に…?』

「どうだろうね。…さて、冷める前に食べよっか?…食べ終わってからが楽しみ」

『……い、今はクッキーに集中!!』

「ふふふっ」

先手必勝。たまにはこういうのも悪くない、かな。

オレンジデー《八重樫剣介》→←今年こそは《藤村衛》



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作者名:雪藤 | 作成日時:2019年10月25日 19時

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