癒しのお部屋。昂輝Ver. ページ19
椅子に座り、ぼんやりと空を眺めていると…後ろから優しい声が聞こえてきた。
｢A。ココアとミルクティー、どっちがいい？｣
『…？』
振り返ると、そこには2つのマグカップを持った昂輝の姿。『ミルクティーください』と返事をすると、彼は優しい笑顔でミルクティーが入ったカップを渡してくれた
｢ミルクティーと答えてくれると思っていた｣
『え？それは…どういう…』
隣の椅子に座った昂輝の手元を覗き込むと、彼の手にもミルクティーが入ったマグカップが。つまり…ココアは用意していなかったらしい
『なんで聞いたの？』
｢会話をひとつでも多くするため、かな｣
大して変わらないが、と苦笑いをしながらマグカップに口をつける昂輝。程よい温かさのミルクティーは猫舌の私でも普通に飲めた。
｢Aは、休憩中か？｣
『休憩も何も…別に何もしてないし』
｢…そうか？｣
休憩するようなことはしていない。ただぼんやり空を眺めていただけ。ほんとうに何もしていないんだと昂輝に伝えると、彼は｢そうか｣と短い返事をした。
｢…俺には、Aが一生懸命戦っているように見えた｣
『私が…なに？どうしたの？幻覚？』
｢そうじゃない。頭の中で、自分の不安や悩みと戦っているように見えたんだ｣
『…』
｢今は一段落して、ぼんやりしているところだろう？｣
『…否定しない。でも、実際何もしてない』
何も進んでないよ、と呟くと昂輝はマグカップを机に置き、立ち上がって私の前に立った。
｢お疲れ様｣
『…え』
｢心の整理も大切だ。無駄じゃない。だから…お疲れ様｣
ぽんぽんと頭を撫でられ、昂輝の顔が近付いてくる。いつもの事だけど…すごく近い
『…っ』
｢A｣
『…？』
｢もしまた不安になったら、俺に話してごらん｣
『…！う、ん…あ、ありがとう…』
ありがたいけど、近い。緊張で呼吸が浅くなる、目を逸らしたいのに逸らせなくて、頭の中が真っ白になった。
｢……ん…｣
『ん、ぅ…』
唇同士が重なり合い、昂輝の指が頬を撫でる。顔が離れると、何かを思いついたような表情が見えた。
｢…そうだ、A｣
『…な、に？』
｢次何か悩んだら、俺の事を考えてほしい。解決出来るかはわからないが…俺が、Aを守るよ｣
『〜っ』
ふわりと笑った昂輝が、私の頭を優しく撫でる。なんかもう色々恥ずかしくて、無言でミルクティーを飲み込んだ。
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作者名：雪藤 | 作成日時：2019年10月25日 19時
