癒しのお部屋。衛Ver. ページ17
不安や悩みでどうしようも無くて下を向いていると…コトッ、とパキラが現れた。
｢Aちゃん、見て。パキラが成長したんだ｣
『…そう』
｢…Aちゃん、聞いて？俺ね、さっき部屋を間違えて…｣
『衛、私と居ても楽しくないよ？』
｢そんなことないよ。俺は、君と居たいんだ｣
こんな暗い雰囲気の私と居たら楽しくない。だから衛を離そうとすると…なぜか衛は私の後ろにまわって、両手で目隠しをしてきた。
『…？』
｢何が見える？｣
『…何も見えない。真っ暗』
｢…じゃあ、好きな物を思い浮かべてみよう｣
『すきなもの…』
目を閉じて、とりあえず好きなものを思い浮かべてみる。しばらく黙っていると、衛が目隠しをやめて隣に座ったのを感じた。
｢そのまま、目を閉じていて。…俺も一緒にやる｣
『…？』
言われたまま目を閉じていると、衛が座った側の手に温もりを感じた。
｢まずは、風景からいこう｣
『…ふうけい？』
｢青空がいい？それとも、夜空の方が好き？｣
『…じゃあ、夜空』
｢夜空ね。じゃあ…きらきら綺麗な星空を思い浮かべてみよう！｣
『…うん』
目を閉じたまま星空を思い浮かべ、それをぼんやりと眺めた。
｢…Aちゃん、星座を作って遊ぼうよ｣
いつの間にか目の前にいる衛と、星空を一緒に見上げる。衛はどんどん勝手に星座を作り出していた。
｢あれは…アライヌ座！｣
『えっと…どれ？』
｢あれ！…あ、あっちはパキラ座だ｣
『分からない』
｢そう？あ、じゃああれは？ハートっぽい！｣
『あ…確かに』
｢やった、やっと同意してもらえた…！｣
やったやったと喜ぶ衛を見て、頬が緩む。するとふわりと抱きしめられた。
｢つらいことたくさんあるけど…でも、そういう時こそ空想の世界を歩くのもいいと思うんだ｣
つまり現実逃避ね、と苦笑する衛。空想のはずなのに…彼は温かかった。
｢目を閉じて、リラックス。そうすればどこでも自由にお散歩できるよ｣
あれ…ぼんやりしてる…
｢もしよければ、俺もその散歩にお供させてね｣
その言葉を最後に、ぷつりと途切れた。
『…あ、れ…』
目が覚めるともう朝になっていて、すぐ横には…衛の寝顔が
｢むにゃ…それは無理…｣
『…ぷっ』
｢んん…Aちゃ……笑顔かわいい…｣
『…え』
起きてるのか寝てるのかよく分からない衛を置いて、私はそっとベッドから抜け出したのでした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪藤 | 作成日時：2019年10月25日 19時
