平行線の行方【アレスの天秤】 (ページ6)

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「ねえ」

「あぁ、ごめんね。荷物を拾ってあげていたんだ」

「どうでもいい。それより晩御飯のおかず考えるの、付き合って」

　折角の善意ある行動を言葉の刃でバッサリと切り捨てていく辛辣な友人に思わず苦笑を浮かべてしまう。流石はミス・ポーカーフェイス‥‥‥‥いやそれは関係ないか。

　つい先々週あたりまで満開だった桜の並木道も大分桃色が減って来た。中学に通える期間も徐々に狭まっていく。彼らとの関係も日数を経るごとに狭まっていけたら、なんて叶いもしない妄想を描きながらゆっくりと歩く。

　残念なことに、長期にわたるリハビリが必要になると医師に言われた。それも進学をしてからもスポーツをするなら尚更、と。この脚がもう少しだけ丈夫であったのなら、当たり所がもう少しズレていれば、こうして一人きりで放課後を過ごすことも無かったのだろうか。別に今の日常に不満がある訳でもないし、「女子生徒Ａ」としての学校生活も悪くはない。

　もう少しだけ刺激が欲しいと、こんな体で思うのは。きっとお門違いなのだろう。

　結局突き放すような結果になってしまったのだが、あの選択に後悔は無かった。あのまま彼らの背中を追ったとしても、この足が先に限界を迎えてしまうことは分かり切っていたのだ。

「今日の晩御飯、ハンバーグなんてどうかな」

「それこの前も言っていたじゃない」

「えぇ、美味しいじゃない。ハンバーグ」

　歩幅を合わせてくれる友人の見えない気遣いに感謝をしつつ、他愛のない会話をしていく。部活の話は、あえて避けるように。