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「でもさ。アンタ、悔しくないの？ナントカ島からの転入生に居場所とか取られてさ。元はアンタの居場所だったんだし、我が物顔で戻っちゃいなよ」
「いや、私そんなジャイアン気質じゃないし」
「お前の部活は俺の物、俺の部活は俺の物、って勢いで入部届出して来なって」
「待って、想像以上に独裁者なんだけど！？」
そう突っ込めば笑いを零す友人達。「よくよく考えてみればアンタがジャイアンとか無理があるわ」と話を切り出してきた当の本人が否定してくるものだからこっちまで笑ってしまった。
「でもまあ。秋がいなくなってからアイツ、全然笑わなくなったよね」
「元から滅多に笑わなかったのにね。戻ってきてくれないかなあ、秋ちゃん」
「そういや転校先ってどこだっけ？」
「ほら、利根川東泉、だっけ？円堂も一緒の所」
自身が無いのか「ね？」、と確認をとってくる友人に苦笑いしつつも「合っているよ」と言えば今度は自信ありげに「うん、利根川！利根川東泉！」と答える。思わず先程までジャイアン理論を語っていた友人が呆れた表情を浮かべているのが見えた。
「急展開、って感じだよね。アンタがサッカー部のマネージャー志望なんて」
「あ、入部届出した？」
「放課後に渡そうかな、って‥‥‥」
「‥‥‥今から渡してきなよ」
友人がまたもや呆れたようなまなざしをこちらに向けてくる。「えっと、その」、と自分が戸惑ったような反応をすれば大きなため息を吐く。
「私らもついていくしさ！一人ぼっちだと心細いんでしょ、転入生に声かけるの」
「ほら、さっさと行くよ」
友人達はそうと決まれば、と荷物を片付け始めこちらを急かして来る。昼休みの時間はまだまだ残っている。言い訳を述べたところで彼女らには見抜かれてしまうことだろう、降参だ、とでもいうように「分かったよ」、と中庭を後にした。
「それにしても、なんで急に再入部する気になったの？」
「この前の試合を見てきてさ」
「あぁ、アレか。中継見たけどヤバかったね」
「十対一だっけ？灰崎君すごかったよね！もしかしてそれで闘志が湧いた、って感じ？」
「まあ、そんな所かなあ」
残念ながら自分達のクラスに転入生は来ていない。二年生が大多数を占める中、三年生はたった二人だけ。「私らがあと一年遅く生まれていたらねぇ」と楽観的な友人が愚痴を零しているのを苦笑いしながら三年生の教室へ向かう。まずは鞄に入れていた入部届を取りにいく。
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作者名：ゆきのさち | 作成日時：2019年7月13日 12時
