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「‥‥‥知り合いが商品化されているのって、何か変な気分」
「なんとなく分かるわ、それ。売り場の前で身内の名前を聞くと気まずくなるの」
「待って。君、まさか集めているの？このカードって沢山出ているんじゃないの？」
「まあ、趣味の一つや二つあればいいかな、って」
「君の家、ただでさえ本も多いのにそれに加えて知り合いの商品だらけになるの‥‥‥？見られている感じとか、そんなの無いの？」
先程まで怪訝としていた表情を正してそう言えば、今度は友人が怪訝な表情をしている。何か間違った事でも言っただろうか。
「いや。貴方どんな使い方すると思っていたの？」
「だって他の子はなんか宗教みたいな飾り方をしていたよ？特に桃―――」
「いい？他の人の前ではくれぐれも「宗教みたいな」、って言い方はしないで。痛い目見るわよ」
いつにも増して必死そうな友人の忠告を聞いて大人しく首を縦に振る。よく分からないが、これは触れてはいけない話題なのだろう。
「話を戻すけど、ほら。名前の所」
「二つ名まで用意されるんだね‥‥‥」
まだ去年のフットボールフロンティアから一年しか経っていないというのに、この進歩具合に驚きでしかない。よくテレビでも報道されていたがまるで他人事のように思っていた。いや、実際そうなのだが。
「貴方も怪我さえしていなければあったかもしれないのにね」
「たとえ私が怪我をしていなくても、最終的にサッカー部はバラバラになっていたよ」
友人の皮肉を皮肉で返す。あの親善試合の結果がきっかけで今のサッカー界があるといっても過言ではないのだ。自分の足がどうだろうと、そんなことは大人達にとって全く関係ないことだと言うのは嫌という程知っている。
大人たちの理不尽に立ち向かってやろうと奮起する程、子どもではない。「仕方のなかったこと」だと片付けて普段通りに立ちふるまう、それ位でちょうどいいのではないだろうか。危険だと知りながらも戦おうと思う少年のような心はもうすでに無かった。
いつからだっただろうか、こんな風になったのは。
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作者名：ゆきのさち | 作成日時：2019年7月13日 12時
