始まり ページ1
〜ゆうとside〜
あの日は
世間が伊野尾革命と騒ぎ出した夏頃だった
晴天の雲ひとつない下で新緑が風に揺られているのを
君は窓から見つめてた
その風景に溶け込んで消えてしまうんじゃないかってくらいに儚げで綺麗で目を奪われた
日差しが強い中
君の透き通る様な綺麗な肌の色は
本当に今すぐ消えてしまいそうで
俺の心はぎゅっと鷲掴みされたみたいで目を逸らせず魅入ってしまった
ふと気づいた君が俺に向かって
いつものふにゃっとした笑顔を向けてきた
「なーにみてんの？ゆうと」
さっきまでの愁いを帯びた顔を隠すかのように
また君は
仮面をつけるんだね
俺はずっと小さい頃から君を見てきたから
君の小さな変化を少しはわかるようになった
「んーん。いのちゃんが空見てるなーって見てた」
君は周りに迷惑を掛けたくない人間で、自分の内を見せたくない人だから俺は知らないふりをするよ
「俺なんか見たっていーことないだろ？」
けたけたと笑う君はいつもの君で
その笑顔の下に何を隠しているのか
ねぇ
つらいんじゃないの
伊野尾革命って騒がれて
世間の目が集中して
普段から適当ですっていうけど
違うよね
いつもちゃんと考えてるの知ってるよ
プレッシャーになってるんじゃない？
俺がその不安を解消してあげることは
無理なのかな
俺の立ち位置は昔から弟のまま？
「えー？いのちゃん綺麗だからいつまでも見てられるよ！」
それなら
俺も
しばらくは、君の演技に付き合うよ
「本当、昔からゆうとは俺のこと褒めるよねー」
肩から笑う君が
ふと落とす切ない目線
俺は気付かないふりをして
君が壊れないように
寄り添うよ
to be continued………
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作者名：悠漆 | 作成日時：2018年5月9日 10時
