▽我ら、有閑倶楽部。3 HSJ▽ (ページ25)

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無事でよかったと一安心する一行に、涼介は震える声で告げた。

涼介「つ…突き落とされた…いきなり、背中押されて…」

トイレから出た後、気分が優れずにデッキで風を浴びていたところを後ろから突き落とされたらしい。

いきなりの事で相手の顔は分からなかったようだ。

女王ミュスカが海に落ちたという事実はたちまちに広がり、婚約者ビスキーも噂を聞きつけて、ミュスカのお付きであるネグローニの元にやって来ていた。

「全くなんて恐ろしいことでしょう…早く犯人を見つけなくては、安心して寝れやしませんよ！愛するプリンセスにもしものことがあれば…！」

ビスキー公爵は早口な英語で捲し立てる。

ひとしきり騒いだ後、翌日のパーティーには出られそうかとネグローニに聞き、大丈夫そうだと返事を聞くと公爵は部屋を後にした。

同じ部屋の中にいて一部始終を見ていた涼介以外の有閑俱楽部メンバー。

ふと、考え込むようにしていた圭人が、少し申し訳なさそうにネグローニに話しかけた。

圭人「…あのぅ、ご気分悪くされたらすみません、モルト王国って昔イギリス領でしたよね？…だから皆さん、英語を？」

「えぇ、今では母国語のようなものですよ」

圭人「そうなんですね、ごめんなさい変な事聞いて…。でも、祖国の言葉をそう言ってもらえて嬉しいです」

そう言ってネグローニに微笑んだ圭人は、再び何か考えているようだった。

同刻、ミュスカの部屋では涼介がベッドに横になっていた。
その隣には、椅子に座って涙を流すミュスカが。

涼介「…泣かないでよ、なんともなかったんだからさ」

「でもっ…これで３度も危ない目にあわせたわ…」

ミュスカは涼介の手を握って言った。

「もうやめましょう、危険すぎるもの…！私、国を捨てるつもりなのを発表するわ。そうすればあなたをこんな目にあわせなくて済む…！」

涼介「…大丈夫だよ、これくらい覚悟して志願したんだから」

涼介は、ミュスカを見つめて手を握り返す。

涼介「ミュスカは、これから新しい人生を生きるんでしょ？ミュスカの幸福のために、俺はこうしてるんんだよ？」

涼介は考えていた。
アメリカに着いたら真っ先にミュスカに告白しよう、と。

そのために、ミュスカをアメリカまで守り通さなければいけない、と。

「涼介…、嬉しいわ。あなたに出会えてよかった…」

ミュスカはそう言うと、何度も何度も感謝の言葉を口にした。