私の隣には1人の王子さまと神様がいます！ (ページ9)

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58話ページ9

部屋に通されると紫呉の家と同じようなちゃぶ台があり、2枚の座布団が敷かれていた。母親はそこに座るよう紫呉を案内すると向かいに座り、話を始めた。

？「今日はこんな時間にありがとうございます。私、神童沙緒(さお)と申します。」

紫呉「いえいえ。こちらこそ。沙緒さんとお呼びしてよろしいですか。」

いたって健全に挨拶をするが空気はとても冷たいものだった。沙緒は少し鋭い目つきになって話を聞こうとしていることが伺えた。

沙緒「ええ。では早速お聞かせ願えますか？茜とそのお相手の方のお話。」

由希の名前すら覚えていない沙緒に紫呉も少し内心呆れる。

紫呉「お相手のお名前くらい覚えられたらいいのに……」

ちょっと嫌味っぽく紫呉が言うと沙緒は何でもない様にいった。

沙緒「私が興味を示しているのはお相手の名前などではありませんから……」

紫呉「あぁ。なるほど……じゃあお話ししましょう。神童茜とお相手の現状を…」

更にピリッとした空気が流れる。

沙緒「ええ。隅々まで……」

紫呉「そうしたいのですがね…語るも何も今の現状は凄く悪いと言った方がよろしいですよ。何しろ茜さんはお相手の重荷になってしまっている……」

紫呉は沙緒と面倒になる事を避け、狡猾な頭で言葉を選んで会話する。

沙緒「茜が……重荷とはね。」

沙緒は少し不満そうに顔をしかめて下を向く。

そんな彼女に続けて紫呉は話した。

紫呉「まぁ、まずお相手の方が許嫁の存在を認めていませんから。」

そう言った瞬間、沙緒の手がぐっと握られフッと笑う。

沙緒「……そう……まぁ、想定内ですね。」

とても恐ろしい微笑みで紫呉の方に向き直った。

紫呉「何か、対策でも？」

考
沙緒「終業式の日はいつですか？」

考え込む時間も無く、沙緒は尋ねた。

紫呉「あぁ、明日でしたね。」

紫呉も何もなかったかのように答える。

沙緒「なら丁度良いです。その日お相手の方に予定を空けておく様にいっておいて。」

それを聞いて全て察した紫呉は少し真剣になって聞いた。

紫呉「ここへ、お呼び立てですか……」

それに対して沙緒は人を操る様な目で静かに答える。

沙緒「ええ。お相手の方には私直々にお話しさせて頂きますわ……」

目だけで恐ろしい……紫呉はそう思いながら沙緒に促され屋敷を出た。

さっきは気づかなかった桜の蕾がとても暖かく大きく見えた。紫呉は桜を見上げる。

紫呉「……こんな桜……ここにはに合わないよねぇ……」

そう呟いた。