私の隣には1人の王子さまと神様がいます！ (ページ8)

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57話ページ8

紫呉は家をでると、ダラダラとある家に向かっていた。

紫呉「悪いね……由希くん……」

紫呉は呟くと目の前の大きな家の門の前に立って空を見上げた。もう空は薄暗い。ふぅーっと一息つくと紫呉は門をたたいた。

紫呉「草摩の家のもので～す。神童Aさんの母君はいらっしゃらないのですかー？」
家の方に向かって叫ぶ。

門番「草摩……アンタ、草摩紫呉さんか？」

門番はゆるーい表情の紫呉を怪しんで声をかける。

紫呉「そう。僕が草摩紫呉。そちらさんがお呼びしたはずだよ？」

門番「確かに。こちらがお呼びたてしました。紫呉さん。この先の1番大きい建物にもうすぐ奥様も帰ってくるはずです。そこで待っていて下さい。」

紫呉「はいはーい。」

やっぱり安定の返事をして、門をくぐり真っ直ぐ進む。すると一際目立つ屋敷が見えた。

紫呉「ここかなっ？」

そう思い、扉の前に立って壁にもたれる。
すると子供の声が聞こえてきた。

？「おじちゃん、だれ？」

紫呉「ん？」

ふと、下を見ると小さい男の子がいた。

？「おじちゃん、だれなの？」

男の子は不思議そうに紫呉を見上げている。

紫呉(あー。この子が例の息子さんね。)

紫呉は腰を落として、いたって普通に返した。

紫呉「僕は紫呉。君のお母さんとお話ししにきたんだ。」

紫呉がそういうと、男の子は俯いて言った。

「僕はお母様なんて嫌いだよ。」

紫呉は全てを察した上で、優しく聞き返した。

紫呉「どうして君はお母さんが嫌いなの？」

すると、男の子は涙を溜めながら言った。

「何やっても、馬鹿って怒鳴ってくるんだ。数字の計算が出来なくて、この前なんかほっぺを叩かれたりしたんだよ！」

紫呉「そっか……それは」

？「何をしているのかしら？紫呉さん？」

紫呉の男の子への慰めの言葉を遮るように女性が現れる。

紫呉「……いえ？別に？」

？「そうですか…。この子、余計な事言わなかった？」

紫呉「別に？素直ないい子でしたよ。」

紫呉は男の子がなるべく怒られないように言う。

すると、母親は少し顔をしかめて言った。

？「ならいいわ。秀、もうあっちいってなさい。」

追い払うように言うと、そこでようやく男の子の名前が分かった。

ー神童秀ー

少しの間紫呉は秀を見つめていた。

？「さぁ、紫呉さん。中に入ってお話ししましょうか。」

母親は怪しげな笑みを浮かべて紫呉を案内した。

紫呉「……そうですね。」

紫呉も少し楽しそうに口の端を上げて答えた。