99話 ページ50
「紫呉さん？大事な話って何ですか...？」
居間に座り、紫呉はゆっくりと話を始める。
「由希くん、神童さんに出会って変わったよ。笑顔で笑うようになった。僕にはよく分かんないけど神童さんに出会って彼は、強くなった気がするよ。」
優しくなった気がするよ。
そう言った紫呉は普段見せる事の無い優しい顔だった。紫呉もAに支えられてきたのだ。
そんな紫呉にAもいつもの優しい笑顔で言う。
「それは私の方だって紫呉さんにこの家に迎えて貰って、由希くんに恋をして、夾くんに支えてもらって、自分に居場所があるようになったのです。」
紫呉は、「それは良かった。」と言うと真面目な顔つきになって言った。
Aもこくりと頷く。
「今年の9月、由希くんが神童家に入ることが決定したんだ。由希くんはずっと前から感ずいていたかもしれない。夾くんや十二支のみんなも。」
「...いつかは来るって知っていましたよ....」
私だって知ってた。
でも、2人で乗り越えようって言った日から、頼って欲しかった。
鼠さんになったって気持ち悪いなんて思わないから、抱きしめたりすることだってしたかった。愛を形にしたかったんだ。
由希くんだけじゃない。
みんなも何で黙ってたの？
牛さんの 春くん。
兎さんの紅葉くん。
ヘビさんの綾女さんに、
辰のはとりさん。
猪の楽羅ちゃん。
犬さんの紫呉さん。
そして、猫さんの夾くん。
なんで？
「A、それは1つだよ。」
「そうだぜ。」
「え.....由希...くん？夾...くん？」
ふすまが開いて由希と夾が現れて言う。
「みんな、君の幸せを壊したく無かったんだ。もちろん俺も。」
「あぁ。オレも春も楽羅も紅葉もはとりも綾女も紫呉もな。」
由希に続けて夾も伝えた。
由希はAの横にそっと腰を落としAを見つめて言う。
「例え何処に行っても...俺の気持ちは俺自身が決めるから...君を嫌いになんてなれないからさ。.....」
安心してよ。
A。
その瞬間ボンッと音がし、久しぶりに見る、由希の鼠になった姿があった。
Aは小さな鼠の由希を手のひらに乗せて抱きしめて言う。
「どんな姿でも、愛していますよ。大好きですよ。.....」
「A、ちゃんと愛されてるじゃねーか。」
安心した様に夾が言うと、隣の紫呉が茶化して言った。
「当たり前でしょ〜由希くんの初恋なんだから〜」
これからもよろしく。A。
勿論ですよ...由希くん.....。
「「大好き。」」
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作者名：翼 | 作成日時：2019年1月19日 0時
