97話 ページ48
「ここだよね。歩いてきたら結構距離あるなぁ。」
「前は車で来たのでしたね。」
ここは神童家の近くの家の影である。こうして隠れて様子を伺うしかないのだ。
「紫呉さん達が門から出てきましたよ！」
Aは小さく指を指す。門から丁度紫呉と茜が出て来ているようだ。
「..あ、あの人も.....」
そこにはAの母親である、沙緒の姿もあった。
(久しぶり...お母様.....)
久しぶりに見る母親をAはじっと見つめている。
一方、門前では紫呉達が話しこんでいた。
「わざわざ今日はどうもですわ。紫呉さん茜。」
「高校卒業までに必ずあの人を連れて帰ってくるから。安心して。」
茜は誓うように言う。沙緒も満足そうに「待ってるわ」と、言った。
後ろから見ていた紫呉は茶化すように言う。
「気が早いねぇ〜茜ちゃんは。ボクも協力出来ることはするつもりだから〜紗緒さん、また。」
「ええ。お気をつけて帰ってください。」
1通り話が終わったところでA達は紫呉達の元へ近づく。
「あっ.....あの.....お迎えに...」
「よく迎えに来れたわね。しかも2人で。」
「まぁまぁ、迎えに来てくれたんだしガン飛ばさない仲良く行こうよ〜茜ちゃん〜」
「まっ、いいけど。」
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」
「そうですね！」
茜はなんだか不満そうだが、帰り道を歩く。由希もほっとした様だった。そんな由希に茜は近づいて隣に並ぶ。
「由希。相当、好きなのね。」
「茜？どしたの急に？」
突然の茜の言葉に由希は戸惑う。茜が話しかけてきたのが衝撃だった。
由希に構わず茜はなんだか清々しそうに告げる。
「正直びっくりしたわ。由希があんなに簡単に恋に落ちるなんて。.....ありえないと思ってたし。」
「俺だって恋くらいするよ。」
「由希も人間だものね。そりゃそうよね。」
Aが言いそうなこと言うの珍しいから。
「そこを分かってくれるのはちょっと嬉しいかな。」
素直になってしまった。
「その言葉、私に期待させてるようなモノなんだけど？」
そこで、今まで由希に口を出さなかった茜が由希に意見する。
「由希くーん!!」
しかし、それはAの声によって続きを遮られる。茜はAの元へ行く由希の背を見つめる。
そんな茜に紫呉は声をかけた。
「どう？由希くんって天然でしょ？」
「まぁね。私に笑いかけるなんて。」
「神童さんはもっと天然だよ。」
「知ってるわ。
もう、知ってる。」
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作者名：翼 | 作成日時：2019年1月19日 0時
