85話 ページ36
「由希くんっ！」
Aは洗面所から戻ってくる途中の由希を呼び止めた。
「ん？どしたのA？」
由希はかなり走ってきた様子のAに首を傾げる。Aは深く息を吸い込み由希に言った。
「今日！桜を！私と桜を見に行きませんか!?」
すると由希は思い出したかの様に言う。
「桜？…そっか。今凄く桜通り、綺麗なんだってね。」
Aはエプロンの端をつかみ、勇気を振り絞ってもう一度聞いた。
「その……行って頂けませんか？」
由希は目を丸くしてAに聞き返す。
「俺でいいの？」
その言葉に、Aは頭を下げて言った。
「由希くんと行きたいんです……///」
「でも…友達とかそれこそ神羅とかだって…」
「でも‼由希くんとじゃなきゃダメなんですっ‼由希くんと2人でじゃないと意味が無いんです‼」
Aはバッと顔を上げ由希の服の袖をつかんでさけんだ。
必死だった。
もしかしたら永遠にこのままでいられるかもという希望のある桜だったから。
神童家と草摩家のあの硬い壁を壊せるんじゃないかという希望があったから。
由希とずっと一緒にいたかったから。
由希じゃないと駄目だったから。
由希はAの肩を持つとこう言った。
「いいよ。俺の方こそ一緒に行かせて？」
思ったのと違う答えにAは目をパチパチさせて言う。
「ほっ...本当ですか？」
由希は未だに驚いて頭の生理が着いていないAの手をとると、
「2人で行かせてください...。」
確かにそう言った。
そんな由希に顔を赤くするA。しかし、顔はとても笑顔で、心から嬉しそうだった。
「本当に本当なんですね!!ありがとうございます！では、朝食が終わって1時時間したら出かけましょう！」
Aは精一杯喜んで、一息でこれを言い切った。
「分かった。」
由希は優しく返事をする。
「では！私はこれで！」
返事を聞いてAは直ぐにキッチンに戻ろうとする。由希はそんなAを思わず呼び止めた。
「あっ！待って...A！」
何か伝えたいことがある。由希はそう思っていた。
「はい？」
Aは首を傾げて由希の方に体を向ける。由希は少し戸惑いながらも
「その.....誘ってくれてありがとね...」
と、言った。
それを聞いて嬉しくなったAは由希にもう一度言う。
「もちろんですよ！由希くんじゃないとダメなんですから！」
「そうだね.....」
由希は小さく返事をする。Aはそれを確かに読み取り、満足気にキッチンへ戻った。
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作者名：翼 | 作成日時：2019年1月19日 0時
