私の隣には1人の王子さまと神様がいます！ (ページ35)

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84話ページ35

Aはキッチンで目玉焼きを作りながら想う。

(桜通りかぁ……大切な人と見ると幸せになれる……永遠にこのままでいられる……)

「行きたい……私……由希くんと行きたい…」

(声をかけられればきっと由希くんは来てくれる……でも、うっとうしいとか面倒だって思われない……？)

「やっぱり神羅ちゃんが羨ましいなぁ……」

キッチンで1人ブツブツ悩んでいると後ろから普段よく聞く高い声がした。

「私が羨ましいって!!⁇」

「神羅ちゃん！？」

紛れもなく楽羅である。10分程部屋で夾と布団とで格闘した楽羅が無事目を覚ましAの所へやってきたのだ。

「ねぇねぇ！私の何が羨ましいの？」

正直な性格の楽羅はAにバンバンと質問をする。

「えっ…その……」

Aが少し戸惑っていると隣で楽羅は「うんうん」と相づちをうっていた。
Aは自分が言いたいことを1つに絞り、楽羅に伝える。

「夾くんに何でもまっすぐに伝えられるところが羨ましい。なんて……」

すると、一瞬目を丸くした楽羅だが、すぐにAの肩をつかんでいつもの高い声で言った。

「そりゃあそうよ！私は夾くんを信じてるもん！受けとめてくれるって信じてるから！やっぱりなんでも伝えるのは夾くんじゃないと駄目だなぁ……」

その言葉がAの心にグサッとささる。楽羅は夾を信じているから伝えられるという事実、信じているからだという事実をつきつけられたきがした。Aは遠慮がちに楽羅に聞く。

「そっか……私……由希くんのこと信じられてなかったのかな……」

すると、またしても楽羅はAと目をしっかり合わせて言った。

「そうじゃないよ！好きになればなる程臆病になっちゃうのは当然だよ！」

楽羅のそれを聞いて次はAが目を丸くする。そして楽羅に聞く。

「そうなの……？」

楽羅はAの背中を押すように言った。

「そうだよ！だから朝食は私に任せてゆんちゃんのとこ行ってきなよ！」

グッ！と親指を立てている楽羅に答える様にAも「うん！」と言い、

「ありがとう…神羅ちゃん…行ってくる！」

と、エプロンをつけたまま由希がいるであろう洗面所に向かって走り出した。