私の隣には1人の王子さまと神様がいます！ (ページ24)

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73話ページ24

やっとの思いで屋敷を出るが、由希はフラフラしながら門までの道を歩いていた。なんだか、本当に熱が出たように体も意識も朦朧としている。あるはずの桜の木もただの木と見分けがつかない程だった。そんな由希を見つけた秀が必死に走って駆け寄り、声をかけようとする。しかし、直ぐに由希の様子がおかしいことに気づき首をかしげた。

「由希にいちゃん？」

秀が心配そうに由希を下から見上げる。
するも由希は足から崩れ落ちる様にその場に膝を落とし、秀の肩を掴んで言う。

「…秀っ…帰り……たい…ケホッ…ケホッ…はぁっ……彼女の所に…返して……」

お願い……

それだけ言うと由希は後ろにバタッと倒れこんだ。由希の体は持病と過度のストレスで弱り切っていたのだ。

「由希にいちゃん!?」

秀も突然の事に驚きを隠せない。

「…はぁっ……はあっ………っあ…ぁ…」

酸素を無理やり取り入れる様な荒い息をした。
苦しみだす由希をどうにか助けたくて秀は聞く。

「大丈夫っ!?…僕っ！僕どうしたらいいっ!?」

「…黒い車…の中の人っ……誰…か…」
そう言うと由希は限界がきたかの様に目を閉じた。

「呼んできたらいいんだね!?」
由希は目を閉じたままこくりと頷く。

由希が頷いたのを見て秀は門の方へ走り出す。
門番が呼び止める声も聞かず門を飛び出し、例の車の助手席の窓ガラスをドンドンと叩いて叫んだ。

「誰かっ‼由希にいちゃんがっ‼急に倒れてっ‼」

それを聞いたAは助手席まで身を乗り出して言う。

「由希くんがっ!?私、行ってくる‼」

はとりにそう一言言うと車をドアを閉めないまま走って飛び出す。

「…おい……ったく医者が行かなくてどうするつもりだ……」

それを見てはとりは焦りながらもAの必死さに呆れた。そんなはとりに紫呉は言う。

「これこそ、青春の1ページって奴なんじゃないの？…はーさんには分からないだろうけどね？」

「…黙れ。」

紫呉に向かってはとりは冷たく返した。そして車を降りて医療バッグを持ち、Aの後を追って門をくぐっていった。

「黙れって言われちゃった～」

車には紫呉ただ1人が残され1人の呟きが残った。