私の隣には1人の王子さまと神様がいます！ (ページ21)

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70話ページ21

由希にいちゃん……」

秀は初めて聞いた由希の怒声に心を打たれる。
こんなに自分の事の様に叫んでくれる人もいるんだと感動し、沙緒に怯えないで言葉を発した由希の側にかけよる。

そんな2人を見ながら沙緒は機嫌を悪そうにして言った。

「貴方、自分の立場を理解しているのかしら。Aを何処で知ったのか知らないけど、貴方一人くらい私は簡単にこの家の人間にできるの。………貴方にはこの意味分かるわよね？」

試すような言い方で由希に問う。

「……それは…」

自分の立場は理解しているつもりだ。それでもAの想いに、自分の想いに逆らう事は出来ず、欲望のままについ叫んでしまった自分に何も言えなくなった。

「もういいわ。秀！あっち行ってなさい！先に貴方と話をさせて頂くわ。」

痺れをきらした沙緒は秀を突き放し、屋敷の入り口の方へ向かって行く。

「いいですよ。なんでもしてみせる。秀くん、でもこれだけは信じて……」

由希は沙緒の意見を承諾し、一度沙緒の方へ向くが、最後に秀の方に向き直って信じてほしいと言った。

「…？」

秀は頭にハテナマークを浮かべて由希を見つめる。しかし、頭では自分の姉の事を言っていると理解していた。

由希は秀の頭を撫でながら優しく言う。

「君のお姉さんは素敵な人だよ……きっと、出会ったらもう、彼女意外は自分の姉じゃないって思うようになるよ……。君の姉はそんな人だ。」

俺がそうだったみたいにね……

そう言った気がした。

「…僕のお姉ちゃん……」

秀はやっとのことで言葉を絞り出す。
未だにあたふたしている秀に会話を終わらせるように由希は伝えた。

「安心して……いつか会わせてみせるから。」

由希はそういうと、秀に背を向けて沙緒についていった。

秀は自分の目に涙が溜まっていることに気がつく。そして悟った。

きっと由希にいちゃんを救えるのは自分の姉以外いないのだろうと。

俺がそうだったみたいにと言った気がしたのはきっと嘘なんかじゃないと。

安心して……と言われたのに何故か秀はとても辛い気持ちでその場にしゃがみこんで静かに涙を流した。