68話 ページ19
そうこうしている間に昼になった。
今日は終業式のみなのでそろそろ放課後と言える時間だろう。その頃、桜の木の下で秀は遊び疲れて由希の膝で寝息を立てて眠っていた。
「スースー」
静かな場所に安らかな呼吸音が聞こえる。つられて由希も表情が緩み呟いた。
「久しぶりに疲れた……この子もAみたいな教育を受けてきたのか…きっと遊んだりなんて出来ないんだろうな……」
秀が笑ってくれて良かった…
由希は心からそう思い、眠っている秀を見つめるように下を向いた。
「Aもこんな顔で眠ってたな……」
車の中で見た、Aの寝顔を思い出す。
Aに会いたい………そう思った。
暖かい風が吹き、由希を包む。
A……
今頃何してるんだろう……
・・・
「ホント俺、相当Aの事好きだなぁ…」
そう言うと秀の髪を撫でる。
Aにも同じ風が包んでくれているといいな……
そう思いながら・・・
その様子を影で見ていた門番達は言う。
「秀様が笑っていたぞ……」
「あの人、何者だ？」
「それに警戒を解いて眠ってるなんて……」
「その通りよ。全く勉強もしないで。」
ついさっき帰ってきたと思われる沙緒が口をだした。
「奥様っ‼」
「お帰りなさいませ‼」
門番達が一気に顔を引きつらせる。
「ええ。…茜のお相手の方もう来てらっしゃるのね。」
沙緒はそう言うと沙緒は由希と秀に近づいていく。
ザッザッ
「！？」
いち早く由希が足音に気付き、顔を上げる。
「こんにちは。草摩由希さん。私、神童沙緒と申します。」
怖いくらいの笑顔で座り込んでいる由希にかがんで挨拶をする。
「…はい…」
沙緒の威圧感に少し言葉が詰まった。
「あら、随分と秀が懐いていらっしゃるのね。」
沙緒は由希と秀を見て嫌味に言う。
「まぁ少し話をしたりして……」
「この子貴方に余計な事言わなかった？」
尋問のように一つ一つ由希に問いかけた。
「はい。何も……」
由希がそういうと沙緒は少し由希を睨むと秀に目線を移した。
「まぁ色々気になるけど後にしましょう。由希さん？少し席を外してくださる？」
沙緒が由希の膝の上の秀を抱き上げて言った。
「え……何を……」
目的が分からない由希は呆然とする。
「秀に少し再教育をするだけですよ？」
沙緒は眠っている秀を睨み確かに由希にそう言った。
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作者名：翼 | 作成日時：2019年1月19日 0時
