ご ページ5
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ゆっくりと起きた朝。宮城で朝を迎えたのが懐かしくて、いつまでもこのベッドの上に居たいとすら思えた。
ピコン、とメッセージが届いた通知音。
堅治からとしか思えない私は携帯を取ってリビングに向かった。
仕事がはいりました、ごめんね。という置き手紙は学生ぶりに見た気がする。いい加減子供じゃないのだから、と笑ってしまった。
宮城に帰ってきたことはあまり知らせていないから、特に会って遊ぶということもしないつもりでいた。実家に帰って、堅治に会えばいいや。と。そのついでにということで同窓会と日にちをかぶせただけに過ぎない。
テレビをつけるとサイダーを持ってソファに腰掛けた。
特に好きな番組もやってないために、視線は携帯に向かう。
[ 今日祭り行きたいなら一緒に行ってもいいから ]
そうか、今日か。と私は思い出す。
素直に誘えばいいものの、なんて思うがいつも誘うのは私からだった。
[ 最後だし、行こうか ]
送り付けた数秒で既読が付くのはいつものことであり、そこから返信は遅いのが堅治の癖。
面倒くさい癖だなあって最初は思っていたけれど、今では既読がついて返事を待つのが少し楽しい。
[ 夜行くわ ]
たった一言。わかった、と返せば既読はつかない。もう会話は終わりを告げたのだとすぐに理解してテレビを見つめた。
大人になったって、きっと私達は幼馴染のままでいれると、高校生の頃の私は甘い考えでいたのである。勿論、今は幼馴染のままだけど私が東京に帰ればもう終わりだ。きっと。
それがこんなに寂しいのは何故なのか、
どうして辛いのか。そんなのわかるはずもなくて。
考えるのをやめよう、と立ち上がった私は押入れの戸を開けて中から白い浴衣を取り出した。最後に着たのは高校2年の頃である。懐かしさに思わず微笑んだ。確かあの時は堅治は深緑の甚平を着ていた。
「 ‥かっこよかったなぁ 」
写真は強請りに強請ってたったの一枚。
それでもあの頃がいちばん楽しくて、幸せだったと思う。
同じ学校に通って、同じ制服を着て、同じ時間に一緒の教室に登校して、一緒の夢を追いかけた。
勝って喜んで、負けて泣いた。
その隣でいつも立っていたのは堅治である。
白い浴衣を広げてみせる。
所々に散る紫陽花がとても綺麗だった。
結局あの時堅治は 綺麗 だとも 似合う だとも言わなかったけれど、赤くなった顔が何よりも嬉しかった。
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波音(プロフ) - ことは本当に尊敬する作者さんだよ。移行したりしても絶対読むつもりだよ。本音を言うとこっちの垢に残って欲しいけどせなちゃんがいろいろ考えて決めたことなら応援するよ。またせなちゃんの素敵な小説を占ツクで読めるのを楽しみにしてます。長文失礼しました。 (2017年9月3日 20時) (レス) id: 1301c465ef (このIDを非表示/違反報告)
波音(プロフ) - せなちゃん、こっちでは初めましてだね。瑠奈です。せなちゃんの小説知ったきっかけが白鳥沢バレー部の部誌シリーズで、その後せなちゃんが書いた小説何度も読ませて頂いて、せなちゃんの小説はやっぱり好きだなって思いました。引退は寂しいけど私の中ではせなちゃんの (2017年9月3日 20時) (レス) id: 1301c465ef (このIDを非表示/違反報告)
りらいと(プロフ) - はじめまして。私はこういう少し仄暗くて文学感が強いものが大好きです。占ツクでは珍しいからこそ続けて頂きたいです、ランキングに載っている小説が実力に見合ってないと感じるからこそ、貴方の様な素敵な文章を紡ぎ出せる人にはここにいて欲しいです。 (2017年8月31日 18時) (レス) id: 8413c00811 (このIDを非表示/違反報告)
奏良(プロフ) - なしとして、私の中では一番だと思ってます。なのでもっとたくさんの物語をえがいてほしいです。失礼しました (2017年8月28日 18時) (レス) id: d4e352885a (このIDを非表示/違反報告)
奏良(プロフ) - はじめまして。今回初めてコメントさせていただきます。上手く言えないのですがなんと言いますかギャグよりも感動や考えさせられる小説、心に残るような物語が好きです。なので私はせなさんのかく物語が凄く好きで、できればやめて欲しく無いです。占ツクのランキングは (2017年8月28日 18時) (レス) id: d4e352885a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せな。 | 作成日時:2017年8月15日 16時