｢脳に異常は無いのですがね。｣ ページ3
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｢馴染みのある言葉で言えば、記憶喪失と言いましょうか...｣
パソコンの画面を見つめて難しい顔をしている医師はそう言った。
もう、そういうことでいいと思う。なぜなら、ここで
｢俺、本当は死のうとしてたんです｣
と声を大にして言った所で、精神科へと笑顔で見送られるビジョンは見えているからだ。
もちろん記憶はある。
俺はカン･A、47歳独身だ。人生に疲れ、8階建てビルの屋上から飛び降りた。はずだったのに。
今の俺はカン･A、27歳独身、イケメン。くも膜下出血に倒れ、4日もの間眠っていた。らしい。
幸い身体に後遺症は無く、退院までさほど期間は要さないだろうと言われ、俺は病室に戻された。
そこには先程の女性と、またもや見たことのない男性が居た。
｢A！ああ...本当に良かった｣
目の前の男性はそう言って笑いながらも、目元を抑えた。隣の女性も涙ぐんでいる。
こいつは、こんなにも必要とされているんだ。もう死んだであろう、前の俺とは違って。
俺は他人事のようにそう思った。幸せだろうな、とも。
前の俺が死ぬ程欲しかった幸せは、多分こういう類いのものなのだと思う。他人からの関心と愛情、優しさ。
それがこうも簡単に手に入って、喜んでいいのか分からなかった。47歳の俺の感情が生きてる中で、27歳のこいつの感情はどこかに行ってしまったから。
横取りしたこの人生で俺は幸せになっていいのか。
熱くなる目頭を、ぐっと奥歯を噛み締めて抑えた。これが優しさに満たされた嬉し涙なのか、卑怯な俺への悔し涙なのかは分からなかった。
｢おい、A...？｣
｢Aさんっ！｣
俺を呼ぶ大きい声が聞こえて顔を向けようとするも、俺の意思に反して世界はぐるりと回転した。
考え事をしすぎたのかもしれない。
結局抑えられなかった涙が一粒流れて、俺は意識を失った。
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あさなぎ(プロフ) - ふみさん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しい限りです＾＾更新の方既に若干停滞気味ですが、更新をお待ちくださいませ。 (2018年9月2日 20時) (
レス) id: cbe2f71005 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - コメント失礼します。もう最初からどんな展開になるのかドキドキが止まりません！笑笑続きも楽しみにしています！ (2018年8月27日 18時) (レス) id: 4c89c9c4d9 (このIDを非表示/違反報告)
あさなぎ(プロフ) - 、さん» 発見頂き有難う御座います。私の不手際によるミスで不快な思いをさせてしまい、大変申し訳御座いませんでした。 (2018年8月9日 0時) (レス) id: cbe2f71005 (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグちゃんと外しましょう。違反行為です (2018年8月9日 0時) (レス) id: 15b5e77389 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あさなぎ | 作成日時：2018年8月9日 0時
