それなら消えてしまえばいい (ページ3)

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バスケ部へ仮入部ページ3

「せ、先輩…そ、その人、
誰…なんですか？」
「…内緒だよ。いつか教えるから、さ！
さ、練習練習！」
気持ちが落ち着かない。
汗が止まらない。
こんな状態で楽器なんて吹けない…

帰宅路。
ふらふらと足取りが重く感じる。
先輩に彼女がいるから…
諦めるしかないのかな？

それなら、奪っちゃえば？

脳内で響く、してはならない言葉。
先輩が彼女を好きなら…
彼女よりも好きになってもらえばいい。
彼女を忘れさせればいいんだ。

家に帰って、即座にスマホを
取り出す。

「…もしもし、ねえ詩音？
お願いがあるんだけど…」

「…驚いたよ。いきなり仮入部させてくれ
なんてさ。」
「あはは…ちょっとね。」
本当はまだ仮入部期間。
だから吹奏楽部にはいっていても
こっちに仮入部はできる…と。

「今回の指導役はあたしだから。
よろしく。」
「よろしく、詩音。」
私はバスケットボールを付き始める。
元々バスケは得意な方だったし。
「ね、詩音。ここのバスケ部に
女で優しくてボーイッシュだけど美人で
かわいい人っている？」
「細かいねえ…。…そうね。
美穂先輩とか、真央先輩、かな。」

…あ、そっか。
真央、バスケ部か。

美穂先輩と真央ねぇ…
遠目から真央を眺める。
隣にいるのは、美穂先輩かな？

「詩音。真央の隣にいるのって
その…美穂先輩？」
「そーよ。美穂先輩は
元気で優しい、それで…」
「ね、あの人彼氏持ち？」
「ううん。彼氏はいないみたい。
でもかなりモテるわ。」
「…ありがと、詩音！」
「ま、まあね！」

てことは、真央なの？

私は思いきり駆け出した。
「ちょ、ちょっとA！」
「真央ーっ！！！
真央の付き合ってる人って、陸先輩！？」

「…どうして知っているの？」

時間が止まったように感じる。
一番憎い先輩の彼女。
真央なんて。

「でも、気持ちは変わらない…」

手に持っているバスケットボールを
見つめる。
(これを投げれば、真央は…)

その途端、後ろから鈍い衝撃が走った。

「うっ…」

倒れ込んで、真央が支えてくれる。
(今なら、できる…)
もう自我は無かった。
ボールを強めに、でも落としてしまった風に
真央のひざにぶつけた。
「…！」

「A…A！気がついた？」

目の前にいたのは、真央と詩音。
「ま…まお。」
「よかったあ。あ、安心してね。
足はそこまでじゃないから。
Aもわざとじゃないし。」

…もう止まらない。

あんたなんか、消えてしまえばいいんだ。