この手の隙間からこぼれ落ちないように【刀剣乱舞/だきしめて】 (ページ10)

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不動(極) ページ10

「て、手で、えっと…主の手で、撫でて欲しいんだ、けど…え、とぉ…」

極前よりも顔を真っ赤にして、不動くんが私に声をかけた。いつもより眉が下がって、不安げだ。

いいけど、どうかした？と聞く。

｢そ、その、ちょっと、人肌が恋しくなって、しまって…｣

段々と尻すぼみになっていく。その姿が可愛くて、思わず微笑む。

いいよ、おいで！と手を広げると、おずおずと近寄ってきた。ぽすんと不動くんを抱きとめて、頭を撫でる。

えらいね、頑張っててすごい！なんて、やっぱり薄い褒め言葉を口にする。こういうのが嫌な人もいるけど、うちの不動くんは案外喜ぶタイプだ。

不動くんの顔を盗み見れば、嬉しいけどあんまり締まりのない顔は見せられない！みたいな顔でいた。かわいい。

｢(こんなに暖かいのに、この人が冷たくなってしまう日がくるんだなあ。やっと仕えるべき主の元へ来れたというのに。)｣

不動は、その事実に少し悲しくなって、胸がきゅっと締まるような気がした。

でも、いなくなる前に今までの恩を全て返す。そして、主の役に立つ。主の死に際に、｢ありがとう｣とでも言ってもらえばそれで満足なのだ。なにも言われなくとも、守るべき大事な人のことを支える一部になれればいい。

それに、主には沢山の思い出をもらった。

だから、きっと主が居なくなったあとでも心が折れることなく生きていける。

大丈夫、と自分に言い聞かせるように思った。

だけど、寂しくはなるから、今のうちにもっとあなたの記憶を作らせて。忘れないように刻みつけて。

あなたが居なくなっても、あなたの姿、声、香りも、あなたとの記憶も、全て抱えて生きていく。

そんな決意が不動のなかにあった。