髭切 ページ16
「朽ちて行くのをね、止めることは出来ないんだよ、主。」
こたつに頬杖をついて、こちらをまっすぐ見据えながら髭切が言う。
美しく微笑んで、楽しそうな話題を振るような顔で普通に重い話をぶち込んできた。髭切そういうとこある。
とりあえずそうだね、と相槌を打っておく。
｢それでね、主もいつか朽ちてしまうじゃない？人間だから。｣
うん。
｢だから、君を僕のところへ連れてきてしまえばいいと思うのだけど、君はどう思う？｣
えっなに、もう1回言って？？と言われたことの意味が分からずに聞き返すと、まったく同じ言葉が繰り返された。
よく分からなかったので、その通りに答えると
｢そう？わからないかぁ。うーん、わかりやすく言うと、君のことを｣
｢あるじさま！すこしいいですか？｣
髭切の言葉を遮るように、今剣が声を掛けてきた。
なぁに、と応えて、髭切に断ってから話を聞く。
結局こんのすけからの話と先程の出陣の報告だった。報告を終えて、今剣は髭切にニッコリ笑いかけてから去っていった。今のなんだったんだ？
｢ありゃ、邪魔されてしまったね。まぁいいや。それで、主。君はさ、僕らのことをどう思ってる？刀剣男士？人の形をした刀？かみさま？妖怪？それとも、人間？｣
一気に捲し立てられて、なにも答えられないでいると、髭切はそれを気にせずに話を続ける。
｢このなかのどれもさほど間違ってはいないけど、一つだけ決定的に違うよね。どれだと思う？｣
一拍置いて、くすくすと笑って言う。
｢人間だよ｣
｢僕らは君たち人間よりずーっと長く生きてるし、何事もなければ君たちよりずっと永く生きる。だからかな、所詮100年程度の寿命の君たちが可愛く見えるんだよ。｣
固まって動けなかった私だが、ひとつ気になったことがあった。
“じゃあ私が死んだらどうするの？”
思ったことそのままに聞けば、髭切は固まった。
｢そう、だね。主が死んだら………わからない。悲しくて泣いちゃうかも？｣
最後は茶化していたが、どうしても顔から悲しみの色が無くならない。
その姿がちょっとだけかわいくて、思わず抱きついた。
｢わ、どうしたの主。寂しい？｣
ううん、私じゃなくて、髭切が寂しそうにしていたから。なんて思ったけど、口には出さなかった。
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刀剣男士
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作者名：紺碧 | 作成日時：2023年2月20日 9時
