64キス ページ33
『ど、どうしたの？急に』
私は焦り、真冬君の胸に置いていた腕に力をいれ、上半身だけ離れた。
ま「靴がやけに少ないし、何より、椅子が一つだけ」
真冬君は、丸い、くりくりした目を食卓の机に向けた。
しまった。仏壇は手前と奥に衝立ががあるからバレないと思ったが、椅子までは考えていなかった。
両親が死んだ直後に全て売り払ってしまって、椅子は一つだけなのが当たり前になっていた。
『椅子、今、修理に出してて…』
苦しい嘘。何回嘘を吐くのだろう。
真冬君は何も言わずに、ただ私の目をじっと見つめる。
ま「Aちゃん、何人家族？」
『さ、3人…っ』
久しぶりに聞かれた家族の人数。
昔は、答えるのになんの抵抗も無かった。
でも、今は口にしただけで泣きそうになり、隠せるように真冬君の胸に顔を押し付けた。
ま「もぅ……かわいいなぁ」
そう聞こえたと同時に、背中に置かれた、真冬君の手。
ゆっくり宥めるように上下に動く。
その手が、昔、私が泣いた時に背中を摩ってくれたお母さん手に似ていて、さらに涙が込み上げる。
暖かい。こんなにも暖かい温もりに、なんであの頃の私は気づけなかったのだろう。
ま「な、泣いてるの？え、えと…」
ピタリと止まった背中の温もり。
真冬君は私が泣いているのに気付いたようで、あたふたし始める。
『だめ』
ま「え？」
『手、止めないで…』
ありがとう。優しくしてくれて、ありがとう。
そう言いたいのに、口から出てくるのは我儘ばかりで。
嫌になる。
真冬君はゆっくり、戸惑いながらも再び摩り始めた。
でも、今度はさっきみたいな摩り方じゃなくて、オドオドした摩り方。
真冬君らしい、摩り方。
『ごめんね、泣いちゃって』
顔を真冬君に押し付けたまま言ったため、くぐもった声になる。
ま「いいよ。もしかして、Aちゃんの御両親、家にいつも帰って来ないの？」
ドキッとする。そうだ。もう、帰って来ない人なのだ。
私は首を横に振る。
せめて、否定だけはさせて欲しかった。
嘘になる。でも。否定しないと、心にある無理矢理塞いだ傷口が開きそうになるから。
ま「そっか……」
沈黙が流れた。先ほどとは打って変わり、寂しさのある、気まずい沈黙。
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カバヤキ(プロフ) - ありがとうございます！！是非、楽しみにしていて下さいね！(コメント返せるようになりました！) (2021年5月28日 15時) (
レス) id: ed7878be4d (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 続編おめでとう！新作も楽しみにしてます！なるせくんが出ない理由気になる... (2021年5月27日 20時) (レス) id: ccb1d0def4 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - いえいえ〜物語作るのうまくてすごい！私別の夢小説で更新してるけど全然みてくれないし泣 (2021年5月23日 23時) (レス) id: ccb1d0def4 (このIDを非表示/違反報告)
ルコふぃまてりぃ - 誰なんだ！！！ぶつかってきたのは！！モブ？河本さん？それともnqrseくん？予想は………わからない…… (2021年5月16日 15時) (レス) id: 15224720b1 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 53位おめでとう！ (2021年5月13日 20時) (レス) id: ccb1d0def4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カバヤキ | 作成日時：2021年3月25日 16時
