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朝の4時。
なるべく音を立てないようにそっと鍵を回す。
静かにドアを開けて家に入る。
よし、できた。
壁に身体を預けて一息つく。
「おかえり。遅かったね。」
『ひっ、』
ホッとしたのもつかの間、
目の前に笑顔の真都。
口角は上がっているけれど、目は笑っていない。
……真都からおかえりって言われたの、いつぶりだろう。
案外冷静な頭はそんなことを考えている。
『ごめんなさい、つい』
「ふーん。そっか、」
『昨日、友達に誘われて、気晴らしにいいと思って』
「気晴らし?」
『あ、えっと、』
言いかけて、やめた。
『ごめんなさい。私疲れちゃった。』
「そっか。」
『………何も、言わないの?』
「何か言って欲しいの??」
『そういうわけじゃ……』
「ならいい。早く風呂入りなよ。香水キツい。」
香水…??
『私、香水なんて付けてない』
「…………。」
蓮の匂い、付いちゃった??
だとしたら、すごく不味い。
「そういうことか。へぇ、そう。」
『や、ちがくて』
「俺がいるのに、ふーん。そういうことするんだ。」
『……ごめんなさい』
このまま上手く離婚に持ち込めないかな、なんて。
そして、蓮に拾ってもらえないかな、なんて。
私、最低だ。
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作者名:村上ゆうひ | 作成日時:2020年11月21日 0時