【ヒロアカ】白を愛し、赤と (ページ6)

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56:再会ページ6

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眩しい。
そんなどうしようもないことを、思う。

白い天井に、独特の匂い。
全快ではないにしても、治療された身体。
まだ冴えない頭で考えて、ここは病院かとAは結論付けた。

体の所々はまあ痛い。
騒ぐほどではないけれど。

数分ほどぼうっと天井を眺め、視線を左に流す。
こくりこくりと船を漕ぐ兄が、手を握っていた。
いつも冷たくなりがちの左手に温もりを感じて、それが嬉しくて、Aはぎこちなく握り返した。

「……ん」

手に込められた力に反応したのか、声を漏らした兄にAはわずかに不思議な気持ちになる。
彼に手を握ってもらったのは多分、初めてだった。

少しだけ、声をかけるのに戸惑う。
だからちょっとだけ、その横顔を眺めていた。

『…お兄ちゃん』

「……A？」

『変な反応だね、夏兄』

まるで、死んだ者が蘇ったような。
妹を見るような目ではなかったから、少し笑ってしまった。

夏雄はどうすればいいのかわからないとでも言うような慌てようを見せて、先生を呼んでくるとかけていった。
残された病室、それがあまりに静かすぎて、やることがなさすぎて、一体どれくらい経ったのだろうと答えの出ないことを考えていた。

簡単な検査を終えて異常がないことを確認して、部屋には再びAと夏雄だけになった。

怪我の全てはリカバリーガールも治療できなかったらしい。
だからこそまだ見える傷のある彼女に横になるように、夏雄は提案した。

「焦凍は今家で姉ちゃんと一緒に雄英の先生と面談してるよ。今後は寮制にするんだって」

『へえ…寮になるんだ』

「アイツは家に帰ってきてから結構荒れてる」

『……そっか』

夏雄はAに話す隙を与えないくらい、話を続けた。
彼としては妹が無事に帰ってきてくれて嬉しかったのだ。

だけどAにすると、不思議でならなかった。
聞きたいことは大凡兄が話してくれる。
でも、話してほしいことを話してくれない。

『夏兄は？』

「え？」

『夏兄はどうしてここにいてくれるの？』

2人の仲は決して悪くない。
けれど、関わりがあまりに少なすぎた。
Aはずっと、夏雄という数個上の兄に興味を持っていた。
それでも父が彼らの関わりをよく思わなかったのだ。

思ってもいなかった質問をされて一瞬戸惑う。
そんな自分の様子を見てまた不思議そうな顔をするAを見て、彼は眉を下げて笑っていた。