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自分を呼ぶ声が聞こえて、オールマイトが振り返る。
すぐ後ろにはAがいた。
仮免の講習を終え、バスを降りたばかりの彼女。
たった1人で彼を見上げていた。
『この前、オール・フォー・ワンに会いに行きましたよね？』
唐突な質問。
それに、あの事件に関係していたAの口から。
驚きもあり、オールマイトとしても慎重にならざるを得なかった。
「……どうして、そのことを？」
『あ、ホントにそうだったんですね。ヒーロースーツ着てたしそうかと思ったんですよ！』
「え…ちょ、そんな方法で探るのはやめなさいよ」
あせあせとオールマイトがAを咎めると、彼女は素直に謝罪した。
ただ笑っていたから、本当のところはわからないのだけど。
ゴホン、と咳払いをして用件を問う。
するとAは少しだけ真剣な目をした。
『次に行く機会があったらでいいんです。もし次があるなら、オール・フォー・ワンに伝えて欲しいことがあって』
「どんなこと？」
ひとつ、息を吐く。
何度も問うた、あの問題をもう一度。
もう決心は揺らがないと、心で聞いて。
『私、おまえはヒーローになれないって言われました』
それに続く言葉をオールマイトが黙って待っている。
待っていてくれるから、落ち着いて話すことができた。
友が理解してくれた。
母が背中を押してくれた。
父が認めてくれた。
兄が手を握ってくれた。
だから、宣言を、今ここに。
『私はヒーローになると伝えてください。絶対に、なってみせると』
「……わかった、伝えておくよ」
なんだか長く、他人の言葉に引っ張られた気がする。
多分それは、思い当たる節があったから。
だけどもう、彼女を否定する人はいなかった。
周囲はAの夢を容認した。
諦めてなるものかと奮い立つ。
「なれるよ、轟少女」
『オールマイト…？』
「君は自己評価が低いけど、多くの面で秀でている。ヒーローになれないはずがない」
『……元No.1が言うんだったら、私、夢を叶えられそうですね』
その笑顔は少し切なそうで泣いてしまいそうだったけれど、ただ純粋に幸せそうでもあった。
母と再会して、前に進んだ。
けれどある事件に巻き込まれて、立ち止まってしまった。
その後少しずつ進み出してはいたけれど、大きな一歩はここだったかもしれない。
皆よりいくつも遅れてしまったかもしれないけれど、Aはここから走り出すのだ。
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2020年3月28日 2時
