【ヒロアカ】白を愛し、赤と (ページ31)

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81:和解ページ31

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伸ばされた右手を、焦凍が払う。
払われなかった左手は、Aの頭を一度撫でた。

「おまえたちは自慢の子供たちだ」

焦凍もAも、いったい何が起こったのだ、と思った。
そんなこと、あの父親が言うはずもない。

「ならば俺も、おまえたちが胸を張れるようなヒーローになろう」

父はNo.1ヒーローで最も偉大な男である、と。

炎司のその言葉に、焦凍が勝手にしろと返す。
受け入れなかったわけではない。
彼は彼で、何と返せばいいのかわからなかっただけだ。

『……父さん』

「何だ？」

声をかけて、反応があったことで既に、父が変わろうとしていることに気がつく。
ようやく、自分を見てくれるのではないかと期待してしまう。

今までならきっと、Aは炎司の顔を見ることすらできなかった。
だけど今は、ゆっくりと顔を上げることができた。

『もちろん、父さんのためじゃないけど。焦凍はこれからずっと、ずっと、強くなるよ』

前置きは、ずっとそうだったから。
父は焦凍を自分のために育てようとしていたから。

焦凍はトップヒーローを目指す。
だからこそ、彼の夢のためだと、宣言しておきたかったのだ。

「Aは、どうなりたいんだ？」

『私……？』

父の前で、自分を出すことはなかった。
だからそう、初めての切り返しに驚く。

焦凍がAを見ていた。
いつもなら父親との対話に不安そうにしたかもしれない。
今は、そんなことはないのだけれど。

『うん、ずっとね…焦凍のためになら踏み台でも盾でも、何でもなれるって思ってたの』

そうならなければいけないと、思い込んで生きてきた。
それが正しいと、信じてきた。

『だけどね、本当はずっと焦凍といたい。1番じゃなくていい…ただ、焦凍の隣にいられるように、頑張ろうと思う』

「1人にはしねぇよ」

手を繋ぐ2人が、炎司の目に映る。
彼はもう、否定しなかった。

夢を叶えるために、ヒーローを目指す。
かつて憧れたオールマイトのようになるために。

Aは何度も、自分はヒーローになれないのではないかと思った。
それはずっと、昔からの父の教えが胸に残っていたからだ。
焦凍のためにならなければと思ったからだ。

だけれど今からは違う。
彼女はただ、夢を掴もうとするだろう。

『私は、父さんの背中を追うよ』

No.1の背中を追う。
それは確かに、ヒーローになるということ。

焦凍もAもお互いの顔を見て、ただ幸せそうな表情をしていた。