71:決心 ページ21
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「A」
『なに？』
「諦めんなよ、ヒーロー」
学校に向かう帰り道。
一度Aが言った言葉を、焦凍が口にする。
焦凍があまりにも真面目に言うから、Aは切なそうに、それでも嬉しそうに笑った。
『うん、諦めないよ』
「俺はずっと、おまえのそばにいるから」
『…それなら私、頑張れる』
手を繋いで歩く。
少し、兄妹にしてはおかしいかもしれない。
でもこれが、2人にとっては普通なのだ。
だってずっと、支え合って生きてきたのだから。
夜、父との話を焦凍が影で聞いていたのを知っていた。
だけどお互いにその話をしないのは、単純な優しさなのかもしれない。
学校に着くと、焦凍は相澤の元へ向かった。
自分も行くと言ったがやんわりと断られたため、Aはひとり寮に向かう。
視線の先に、ゴミ捨て場から戻る爆豪がいた。
「母親んとこ行ってきたんか」
『うん、そう』
爆豪には、Aが打ちのめされたことに対して思い当たる節があった。
神野で1番近くにいたからこそ、わかっていたのだ。
「で？ 諦めんのか、ヒーロー」
『ううん、諦めないよ』
「ハッ、そうかよ」
Aがヒーローを諦めること、それに爆豪は関係がない。
だがそうなれば少し、いい気持ちはしないだろう。
だから帰ってきたAに聞いたのだ。
気にしている様子は一つも見せずに。
『ね、勝己くん』
「あ？」
『同じだね、私たち』
意味のわからないことを言うAを爆豪が見る。
左右で色の違う瞳が、彼を捕らえる。
同じところなんてなかった。
強いてあげるとすれば、憧れがオールマイトだということだけ。
『もっと、自分が強かったらって思った』
「……」
『私のせいでって思った』
風が、Aの髪を撫でる。
夕日が、彼女の髪を染める。
『君の気持ちは緑谷くんにはわからないし、私の気持ちは焦凍にはわからない』
「……そうだな」
『でも、君のそれを私は知ってるし、私のそれを君は理解できる』
それとはきっと、罪悪感。
嘆き、苦しみ、懺悔。
彼らしかわからない、無数の感情。
『同じだよ、私たち』
「そうかもな」
でも、だからこそ。
そう続けた爆豪を、Aが見つめる。
「強くならなきゃなんねえ」
『うん。強くなろう』
世間からオールマイトを奪ってしまったからだけでなくて。
憧れを失ってしまったからだけでなくて。
様々な思いを抱いて、強くならねばと覚悟を決めた。
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2020年3月28日 2時
