【ヒロアカ】白を愛し、赤と (ページ2)

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52:憤怒ページ2

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「弔に見せてもらったよ。体育祭での君の姿を」

特に爆豪くんとの試合をね、と言われ、何も言わずに彼を見る。

あの試合、確かにAは本気を見せたし、何より彼女の凶暴さも垣間見えていた。
でも一瞬だった上、大凡爆豪しか気付いていない。
ならばこの状況には関係ないだろう。

「結果は思わしくなかっただろうが、エンデヴァーの娘としての責務は果たせたのかな」

果たせたわけがない、と心の中で毒を吐く。
そもそも父は自分を見てもいなかった、それなのに恥を晒した、と嫌なことを思い出した。

が、それを思うのは今ではないと気持ちを戻す。

どうでもいい話が続いた。
所々で思考がずらされる。
それがまた、不安を煽っていた。

「さて、ここからは君と君のお兄さんの話だ」

『っ…』

たった一言で、Aがたじろぐ。
それは多分、これまでの言葉が焦凍のことを匂わせていたからだろう。

「双子の兄がいたことで、君は苦しんできたのではないか？」

『……そんなことない』

「一歩引いて見てこなかったかい？家庭の中で立場はあったかい？」

ドクン、と心臓が強く打つ。
聞きたくないと思っても、話が終わることはなかった。

「愛されてきたかい？」

『…やめて、よ』

「彼さえいなければ愛されたんじゃないかい？」

『やめて…！！』

焦凍がいなければ、焦凍さえいなければ。
そんなことを思ったことは一度もなかった。

焦凍がいなければ、乗り越えてこられなかった。
焦凍がいなければ、私は生きてこられなかった。
そう、Aは思う。
これのどこも、嘘ではない。

愛されたかった、ずっと。
でも彼がいなかったとしても、愛されたはずはない。
むしろ今の何倍も傷ついていただろう。

「かわいそうに…僕が救ってあげよう」

『望んでない！踏み込んでこないで！』

考えれば考えるほど、追い込まれていく。

それが彼の目的だと、Aが理解できるはずもなかった。
それが彼の言う使い方だと、知るよしもなかった。

愛に飢えていることを見抜かれていた。
焦凍が全てだということを見抜かれていた。
焦凍のことを言われると、冷静さを欠くことを気付かれていた。

「殺してあげよう、彼を」

ドクンドクン、と心臓がうるさい。
余裕などもう、なかった。

「どうした？そう望むだろう？」

『…………』

刹那。
周囲が炎の海、氷の山で埋め尽くされる。

怒り、ただそれだけだった。
それだけが、Aに残った感情だった。