【文スト】裏を返せば全て善意 (ページ10)

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廊下を突っ切る。
数人の敵をAさんがなぎ倒して。

そして、一つの部屋にたどり着いた。
入らずにもわかる、この先にはきっと何かがある。

『敦くん、ここは違う。標的はもっと奥だ』

「え？どうしてわかるんです？」

「そんなのAの勘だよねぇ？」

『そうそう、野生の勘というやつで！』

扉に手を伸ばすと、彼女は僕の手を掴んでそれを阻止した。

正直、何かはぐらかされた気になった。
でも、深く追求することはしなかった。
必要がなかったのだ。

だって僕らは仲間なのだから、それだけで信じるに値するから。
疑うなんて、ありえない。

「それで、奥というのは」

『そりゃあ、一番悪いやつは一番奥にいるのが鉄板でしょうよ』

「馬鹿の考えることだね」

『太宰さん、さっきから煩いよ』

再び駆け出した僕ら。
ここは戦場であるのに言い争いをする二人に、心の中で頭を抱えた。

既に場所は地下に及んでいる。
光は当たり前のように届かない。

『右右！右だよ！この部屋から何か感じる』

「知らないけど、そう思うなら開けてみたら？」

『敦くん、開けてぇ』

「なんで僕……」

さっきは突然止めたのに、今度は突然ここだと言う。
これも野生の勘とやらなのかはわからないけど、言われたのだから開けるしかない。

背中を冷や汗が流れる中、静かに扉を引いた。

「まさか、これ全部心臓……？」

『保管室か？予想よりも大分多いね』

「でもほら。保管法は悪くないみたいだよ」

部屋の中、一つ一つ区切られて、心臓が保管されていた。
太宰さんの言う通り、保管の仕方は悪くないらしい。
だってどれも、動いていたから。

これが、心臓マニア。
異能力を使った臓器の取り出し。

「Aさんの心臓も、ここにあるんでしょうか」

『どうだろう。でも残念だけど探してる時間はないから進もう。残念だけど！』

「はは、確かに今は時間が惜しいからね」

今ここで彼女の心臓を見つけることができたなら、問題は一つ解決される。
そうなれば状況は変わってくるのかもしれない。

だけど今は、地上で戦っている仲間のためにも急がなければならない。
目標は、心臓マニアの確保だからだ。

「そこ、扉あるよ」

『あ、ほんとだぁ』

Aさんが容赦なく扉を開けると、階段は上に向かっていた。
もしかするとこれは逃走ルートなのかもしれない。

考える暇もなく、僕らもそれを登った。