縁 -YUAN- (ページ27)

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弐拾漆ページ27

最強と呼ばれた陰陽師の一族。
そして国家転覆を目論んだ
同じく当時最強と呼ばれた呪詛師の一族。

これからの人の世を懸けた戦いだった。

倒れた妖狐。
その治癒にあたった主。

不運としか言いようがなかった。
相棒が離れた瞬間、敵が闇雲に出した攻撃がちょうど。
呪いに心の臓を貫かれた主は、相棒の腕の中に倒れ込んだ。

(( 逝くな、まだ終わってねぇんだぞ ))

自分に命をくれた。
半身を預けてくれた。

紅を塗っては似合うか聞いてきた唇の色が
どんどん消えてゆく。

それだけはあってはならないと思うのに
この頭の中に解決策は何も思い浮かばない。

(( 目黒。文献にあったあの咒だ ))

隣に立つ覚りが持ち前の頭の回転の速さで
万が一何かがあった最後の奥の手として
覚えておいた咒のことを示唆した。

彼女が亡くなる前に魂を抜き取り、極楽へ送る。
永い永い時を眠り続けたその魂がやがて
自分に相応しい体(うつわ)を見つけた時、
生まれ変わりとして再び現世に誕生する。

何年かかるか分からない。
相応しい体は見つからないかもしれない。
見つかったとて無事に産まれてこられるか。

そもそも、咒自体上手くいくのかすらも。

(( 天照大神よ、須佐之男よ、月詠よ、守り給い清め給え ))

(( 我ら九人の名の元に…… ))

冷たくなっていく。

なぜ自分じゃないのか。
彼女じゃなくて自分がここにいれば。
少しは恩返しも出来たのに。

あんなに消えたいと願っていた自分が消えなくて
絶対に居なくならないでほしいと願った女(ひと)が。

主を喪った妖たちは絶望した。
力は弱まり、もはや対抗出来るほどの
攻撃も守備も整わなかった。

八体と一人は世を捨てた。
皆散り散りになったが
大抵は故郷へ帰っていった。
主のいなくなった世界などいる意味がないから。
…長らく行方不明となっていた覚りを除いて。