俺はなんでこんなヤツを好きになったんだよ！3 (ページ5)

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「それで？」

教室に戻る途中の誰もいない廊下を歩きながらAはダルそうに俺に聞いてきた。

隣の俺はキョトンとする。

「…なにが？」

「赤点を取った科目の話だ」

「あ、それな。英語と数2」

「…社会と理科は？」

「ふ、ふつー」

Aは俺を睨んだ。

「カンニングしてたんだろ。実際はどのぐらいできる自信があるんだ」

「え、えーっと…」

これは冷たい汗を一筋頬に流す。Aの言葉が的確に刺さるし痛いわで思わず目をそらした。

「…ご、5割は取れると思いマス」

「おい、犬。正直に言え」

「…実は授業聞いてマセン」

「だったら天才でも5割は無理だな」

Aはため息をついてメガネの向こうの青い目を細めた。

「定期テストなんぞ、授業聞いてればできるだろ」

「んなっ、できるわけねぇだろ！」

「なんで？私はできるぞ」

当たり前な顔をするAに俺は正直困惑した。

こいつ、やっぱ自分のこと誰よりも優秀だって顔してる。言葉の隅々からそれを漏らしてくるし。

俺はバカだ。
でもこんなふうに上から見られたら図星だとしても腹が立つ。

「お前はできるかもしんねぇけど…」

「…お前、なんでこの学校に入れたんだよ」

Aは呆れた。

「受験勉強は頑張るくせに在学中の成績はクソ悪い。日本の受験制度の悪い点だな。まあ高校受験は知識の詰め合わせなところはあるから当然か」

「べ、別に中学の時は英語も数学もできたわ！」

俺はそう怒鳴ってから口を尖らせて小さく言う。

「ただ…高校の勉強が急に難しくなって、意味わかんなくなっちまったんだよ…」

正直にそう吐く俺。

高校に入って、英語の授業でまず配られたのは2000ぐらいの英語の単語が書かれた単語帳。
こんなの覚えらっか、ってのが最初の感想。

あと中学とは違うのは、文法の授業があることだ。
(SVCOとか、意味わかんない法則とか)

数学も複雑な公式を見せられて、は？って感じだった。

でもって、面白くもない勉強なんて起きて聞く価値もなくて授業中ずっと寝てたら前回のテストで赤点を取る始末。

「このままじゃ、俺…サメちゃんたちに怒られる…」

そう言ったけど俺はサメちゃんの…俺の母親の悲しそうな顔が浮かんだ。

怒るってよりは泣くんだろうな。家事全般はテキトーなくせに俺を育てることになにより重い責任を感じてるから。

悔しくなって俺はギュッと拳を握る。

そんな俺を見てAは平気な顔をして言う。

「知るか、ボケ」