俺はなんでこんなヤツを好きになったんだよ！3 (ページ1)

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Aはいつも無表情だ。

一人の時は何にも知りませんって顔して自分の仕事をしてる。

教室ではほのか以外の人間とまともに喋ってる様子を見たことがない。ほのかがいない時はひとりぼっちだった。

でもそりゃ、Aさんが望んでそうしてるわけだからな。

俺は文句言えねぇ。
(てか言ったらただじゃすまねぇ)

相変わらずの伊達メガネと地味な雰囲気醸し出して、例の遠足での左腕の骨折もまだ治ってない。

白い布で吊るした左腕も今は慣れてなに不自由なさそうだった。

ふーん。なんでもないような顔しちゃってさ。

俺は口を尖らせながらほっぺを擦る。

あの女、俺がしつこくLINE教えろって言ったらこの間俺のほっぺにID書いてきやがった。
しかも油性ペンで！

おかげでまだ落ちてないし、LINE送ったら既読無視だし。

俺はあいつの連絡先聞けただけでも嬉しい。
(結構はしゃいだ)

友達としての一歩をまた大きく踏み出せたって信じてるぜ！

とはいえ、あいつの何にもなかったような済ました顔にちょっとガッカリしたというか、拗ねたというか…

あー、もっとあいつと近づけねぇかな。

もっとあいつのこと知りたいのにじれったくてなんかイライラする。

「ねぇ、晴矢」

すると、頬杖ついてあいつを見てた俺の後ろから茂人が声をかけてきた。

「なんだよ」

「この間の実力テストの結果はどうしたの？」

「はぁ？なにそれ」

実力テスト？
そんなんあったっけか？

首をひねる俺に茂人は苦笑した。

「あー、やっぱりお母さんに見せてないんでしょ。見せる前に無くしちゃったんだろうけど、瞳子さんには告げ口しておかないであげる」

「え、待て待て！あの約束は定期テストだけのはずだろ？」

「テスト全部じゃないの？」

茂人の言葉に俺は絶望した。

や、やめてくれよ！俺の成績知ってて言ってんのかそれ！

定期テストは頭いい奴らからいろいろ教えてもらったりズルしたりしてギリギリ成績もらえてるけどよっ。
(誰だ、クズって言ったの)

実力テストはズルできないからほぼ真っ白で提出してるんだぞ！点数も一桁に決まってんだろ！

テストの結果は親に見せる約束。
それをすっかり忘れてた俺はハッとする。

「お、おいっ。次の定期テストはいつだ？」

「え？三週間後とかじゃなかった？」

茂人はうろ覚えな感じで言ったが俺はその数字に安心した。

「じゃ、楽勝楽勝！」

俺は頭に手を置いて天を仰いで笑った。

「…そんなわけないだろ、南雲」