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浅野くんと笑い合う彼女を見て、僕はそっと目線を逸らした。
今思えば、初恋だった。遅すぎる、僕の初恋。
業の隣にいる彼女と知り合ったのは業とつるむようになってしばらく経った時だった。
スマートでなんでも出来る、憧れの存在のような業でも彼女の前では普通に男の子だった。
『よろしくね。私、降谷Aって言うんだ』
「よく業くんから聞いてるよ。よろしくね、Aちゃん」
「ちょ、渚くん?」
椚ヶ丘の人気者。そんな彼女と知り合って恋に落ちる日はそう遅くはなかった。
「渚ちゃーん、俺と付き合ってよ〜」
「ばーか、お前何言ってんだよ」
縛れるくらいの髪の毛の長さの男子は珍しく、よくいじられていた。
そこまで酷いいじりではなかったから、僕は軽く流していたのだが彼女だけは違った。
『渚くーん!業と同クラってことはD組だよね?』
「あ、うん。そうだよ」
『ごめーん、これ佐藤さんに渡しといてくれないかな。あ!?重いよ!?』
持っていたダンボールを受け取るとじんわりと重量が伝わってくる。そこまで重いってわけじゃないけど、目の前の彼女は開放されたかのように手をプラプラさせていた。
「いいよ、A組からだと遠いもんね」
『そうなんだよね…。渚くん、男の子だからいけるかなって思って、ごめんね』
「気にしないで?全然いけるから」
『おお!?さすが!力持ちっ!』
彼女は僕を男の子として助けを求めてくれた。じんわりとなにか暖かいものが胸を広がっていくのがわかった。
.
.
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「…………」
休み時間、窓から外を見下ろす業がいた。そっと隣に行くとその目線の先には友達と体育の準備をするAちゃんの姿があった。
「Aちゃんの事見てるの?」
「…っ、うわ。なんだ、渚くんか。
……んー、まぁ…ね」
珍しく狼狽える業が珍しくて思わず笑ってしまった。
「なんで笑ってんの」
「業くんも普通に男なんだなって思ってさ」
「はぁ?」
「好きなの?Aちゃんの事」
「…………」
そう聞くと、耳を真っ赤にさせた業は口を手で隠した。
「…好き、だよ」
「………!!」
「…何その反応。渚くんから聞いてきたんでしょ?」
「いや、正直に言うとは思わなくて」
「何それ〜」
「告白はしないの?」
「まだしないかな」
「…まだ、なんだ?」
「いつかね。Aが俺の事好きになってくれたら、するかも」
「応援するよ」
そう言った僕の顔は笑えていただろうか。
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ゆあ(プロフ) - EOniさん» コメントありがとうございます!コナン編作成まで暫くお待ちください! (4月23日 23時) (レス) id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
EOni(プロフ) - 凄い気になる最後でした!暗殺教室編お疲れ様です。コナン編も頑張って下さい! (4月23日 7時) (レス) @page50 id: 935574fa3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆあ | 作成日時:2023年7月14日 9時