#１８８ ページ45
「虐待」という言葉にﾋﾟｸｯ…と微かに反応した理事長。
「悪かったと思っているよ」
その言葉を聞いて、お母さんが息を吐いた。
「学校の事について、貴方とお話がしたいわ。
Aと学秀、2人でお買い物に行ってきてくれないかしら。好きな物買っていいから。献立も2人に任せるわ」
『う、うん…。学秀行くよ』
「あぁ」
親の喧嘩をこれ以上は聞かせないという母の気遣いなのだろう。理事長も同意なのか何も言わなかった。
『行ってきます』
「…行ってらっしゃい」
上着を着て、外に出る。
「寒いな」
『鍋にしようか』
「いいと思う」
門から出て、歩き始める。はぁ…と吐いた息が白くなって消えていく。
『…まさか殴られるとはね…』
「ああ。だがあの時の父さんの顔は初めて見た」
『そうなの？』
「…父親らしいあの人を見れたよ」
『……うん？』
よく分からなくて首を傾げる。
ついに私達家族は壊れてしまうのだろうか。
「そういえば、E組全員がトップ50に入ったぞ」
『ああ、知ってるよ。見に行ったし』
「…何してるんだ…」
『終業式の前に見に行ったんだ〜』
「…そうか、もう
『学校で会うのももう何回かだね。寂しくなるね〜っ、学秀』
「僕は全く寂しくない」
『えっ』
咄嗟に学秀を見ると、眉を顰めて何かを悔いているような表情をしていた。
「…負けたんだ。赤羽に」
『あ〜、3点だっけ』
「数学の最終問題でミスをしてしまった。彼等に誇れる成績を取れなかった。この悔しさは、絶対に未来に活かす」
『ふふ。うんうん』
「なんだその顔は」
『いや〜？学秀も成長したなぁ…って』
「…なんだそれ。僕ももうあと3ヶ月したら高校生だぞ」
『怖い!!私はもう大学生か〜…まぁ、まだ決まってないけど』
「姉さんのことだから余裕だろう」
『ちょっと緊張して来た。どうしよう在り来りな間違いしたら』
「ちゃんと見直しはするべきだぞ。あと問題文はよく見ろ」
『経験者は語るってや…痛い痛い痛い!!!!』
少しだけいじろうとしたら手を強く握られた。しかも関節のとこ。痛い。
「馬鹿なのか」
『馬鹿じゃないよ、頭いいもん』
「頭いい馬鹿だろ」
『難しい日本語だね』
「言動は馬鹿だ」
『え？』
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作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
