#１８４ ページ41
「敗北し続けても、大きな敗北を経験しても、それでも構わないと浅野くんが気づけたのは…、敗北しても浅野くんの事をしっかり認めて、見続け、褒め続けてきたAさんがいたからだと…私はそう思いますよ」
鼻の奥がツンとする、息を飲み震える息をはいた。
あの時、父のことを認めていれば弟がこうなる事はなかったのにとずっと自責の念にかられていた。
『…学秀は、…理事長の教育を受けながらも確実に成長していたんですね』
「ええ」
12月上旬に、学秀から言われた言葉が脳裏を過った。
＿＿＿「そうなった場合の策は、考えてある。だが僕1人だけじゃ難しい。
姉さん、僕はあの人の教育方針を殺そうと思う」
＿＿＿『…きょ、教育方針を…どうやって……』
＿＿＿「大丈夫だ。姉さんは僕を信じて、見ててくれ」
『…あれは、そういう事だったの……』
殺せんせーはにんまり笑っていた。まるで私の考えが分かるかのように。
私は立ち上がって、皆の方を見た。
『皆、私からもお願いです。
理事長の教育方針を、殺してください』
私はそう言って頭を下げた。
「任せろって、Aちゃん！」
そう言ったのは、前原くんだった。陽菜乃ちゃんと桃花ちゃんが私の体を起こす。
「俺らが負けたことあるか？あ…、学園祭は負けてたわ……」
「1位取んのは俺だからね、浅野クンには悪いけどさ〜」
業くんが笑いながらそう言った。
「業、浅野の前でも堂々と1位宣言したんだぜ？」
「まぁね」
『…学秀の事だから、「面白い、ならば僕も本気でやらせてもらう」とか言ったんでしょう…』
私がそう言うと、皆笑い始めた。
「すっげー!!なんで分かったんだよ!?」
『15年間姉弟してれば分かるよ〜』
「凄いというかむしろ気持ち悪いな」
『うわ酷い！悪口だ〜、イトナくんとお話するの初めてなのに!!』
「トップ50は寺坂が1番問題だよなぁ」
「んだと前原！」
「大丈夫でしょ、俺が教えたんだから」
「竹刀で人をぶっ叩くやつがいるか!!
だったら姐さんに教わりたかったぜ…」
『数学は、業くんの方が適任だと思うよ…？
生徒同士で教えさせたんですね、殺せんせー』
「えぇ。ヌルフフフッ」
理解するのに最も良いやり方だと思う。教える立場になることでより深く理解ができてチームワークも強くなる。
『明日、頑張ってね。皆』
「「「「「おう!!!!」」」」」
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作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
