#１８２ ページ39
『お父さんが嬉しそうに話して、それをお母さんと私は聞いてた。
土日はショッピングモールにお出かけ行ったり
春は桜を見に行って
夏はプールや海
秋は紅葉を見にいったり、キャンプしたり
冬はスケートやスキーしに行ったり、家族皆で鍋を囲んだり…。
本当に、普通のごく一般的な幸せな家族だった。
でもそんな幸せな生活は長く続かなかった。
私塾を設立して3年も経てば塾は大盛況になっていた。たくさんの生徒に囲まれて忙しくもあったけど、お父さんは幸せそうに帰ってきた。
ある日、お父さんが特別幸せそうに帰ってきた。
「3年振りに、池田くんから電話が来た。来週彼の家の近くに寄るから立ち寄って話をしてくるよ。「美味いメシを奢ってくれ」と言ってたから、ご飯も食べてくる。A達の面倒を頼んで申し訳ない、Aもごめんね。来週どこか行こうか？」
そう言いながら私を抱き上げて、頭を撫でてくれた。
『水族館行きたい!!イルカさんまた見たいなぁ』
なんて話したら、お父さんは笑ってた。
「先月行ったばかりだけどね。行こうか、約束だよA」
『うん、約束！』
でも、その約束が叶うことは無かった。
次の週になり、池田くんと会う日の事だった。
お父さんが早めに帰ってきて…様子が違っていた。慌ててお母さんが駆け寄っていった。
「池田くんが、自ら命を絶った」
お父さんは、呟くようにそう言った』
私の言葉に、皆息を飲んだ。
「…そんな」
「まじかよ…」
『「自分のせいだ、教えを誤ったから3年で死ぬ生徒になってしまった」
「強い生徒に育てなければ、なんの意味もなかった」
そう言ってた。
きっと、そこで私が言えばよかった。『お父さんの教育は間違っていなかった』って…。でも、そんな事お母さんも私もいえなかった。
追い打ちをかけてしまうと分かっていたから。
言ってしまったらお父さんは壊れてしまうから。
お父さんは学秀と私の目を見て言った。
「強くなるんだ。父親だろうが、蹴落とせる強者になるんだ。
他人を生け贄にしてでも、自分だけは生き残れる強い生徒になるんだ」って。
そう言った
その日から、私達は教師と生徒の関係になった。
特に教えることが無い時は私達の間に会話は無い…
そんな家に変わってしまった」
「……ずっと、疑問に思っていました」
磯貝くんが、呟いた。磯貝くんの方を見て首を傾げる
『…うん？』
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作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
