#１８１ ページ38
＿＿＿決戦の前日。
期末考査が先に終わった私は、毎度の如く旧校舎にいた。
『クラス全員50位ガ目標…。すごいですね。殺せんせー』
「えぇ。堂々と本校舎復帰の資格を獲得した上で、堂々とE組として卒業するためですよ」
『…E組として卒業…。去年まででは考えられなかった事ですね』
「ええ。
Aさん。中学の期末考査の前日に呼び出した訳、わかりますか？」
『…えぇ。父の事ですね』
「はい。生徒もいますし、話しずらいなら教員室か調理室にでも…しますか？」
『あはは、大丈夫ですよ。皆も気になってるから残ってるっぽいしね…？』
「「「「「……う"…」」」」」
こちらの様子をチラチラ見ていた皆に目を向けると、図星なのだろうそんな反応が聞こえてきた。
何から話そうか…と、頭の中を整理する。
『業くんには見せたよね、私の宝物』
「うん。あの写真でしょ？」
『そう』
手帳の中から、業くんにみせた写真の他に2枚ほど取り出して殺せんせーやみんなに見せるように机に置いた。
「…触っても？」
『どうぞ』
殺せんせーが写真を持つと、皆殺せんせーの後ろや横に回り込んで見ていた。
「…え」
「これ、理事長か？」
「今と全然違うね？」
「あの人もこんな顔できたのか…」
「…何が、あってああなっちまったんだ？」
反応は十人十色。でも初めて家族写真を見せた学秀の反応とそっくりだった。
『…「Aは優しい心を持つ「良い」子だから、どんな子に育つのか楽しみだ。自分の長所も他人の長所もよく理解出来て、それを遺憾無く発揮出来る子になってくれたら嬉しいよ」
当時3歳の私には理解出来なかった言葉でも、お父さんはよく言ってた。
「良い」生徒を育てる。それが、お父さんの教育方針だった』
私の言葉に、みんな目を丸くした。
「まるで、殺せんせーみたい」
「…えぇ」
『この学園が建てられる前、お父さんはこの校舎を使って「椚ヶ丘学習塾」を始めてた』
「…私塾を開いた…って、理事長に言われた事があるよ」
そう言ったのは、竹林くん。
『そう。「「雑音の無い山奥で、各自の長所を存分に育てる」その為に塾を立てた」ってお父さんは言ってたの。塾が出来てすぐ、生徒が3人入塾した。
3人が、その塾の1期生。
池田くんは元気が「良く」、バスケが好きだから将来はバスケ選手になると話す生徒。
森さんは要領が「良く」、面倒みの良い明るい生徒。
永井くんは真面目が「良く」、1番頭が良い生徒だと』
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作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
