#１８０ ページ37
「浅野。今までだって本気で勝ちに行ってたし、今回だって勝ちに行く。いつも俺等とお前等はそうして来ただろ。勝ったら嬉しく負けたら悔しい、そんでその後は格付けとか無し。もうそろそろそれでいいじゃんか。「こいつ等と戦えてよかった」って
「余計なこと考えてないでさぁ、
殺す気で来なよ、それが一番楽しいよ」
殺意を少し纏わせた業が人差し指で首を切るような動作をしながらそう言う。その姿を見てﾆｯと学秀は笑った。
「面白い。ならば僕も本気でやらせてもらう。
…赤羽、姉さんは甘いもの好きだがしょっぱいものも好きだぞ。全てがあるバイキング形式のランチやディナーを1番喜ぶ」
「あ、まじ？動物園行く予定なんだけどなんか情報ない？」
「…そうだな。ふれあいコーナーがあったら必ず連れてけ、動物と触れ合うだけで機嫌が上がる」
「単純かよ」
「Aちゃんてチョロいよな」
「好きな動物を見つけるとすぐに走り出すから、手は繋いでおいたほうがいいぞ」
「あの子何歳？」
「一応18歳だ」
.
.
.
理事長室に帰ってきた理事長は、とある存在に気づき歩き始めた。
「…おや.あなたからやって来るとは珍しい。何も悪いことしてませんよ。殺せんせー」
殺せんせーは、机の上で漫画を読んでいた。理事長に手を振り、ｽﾄｯ…と降りた。
「知っています。あなたはいつも最後の最後は正攻法を好む。この期に及んで小細工を使うような人ではない、我々の教育合戦も恐らくこれで最後。
私の存在を拒まずに受けて立って頂いたお礼をと思いまして」
エクレアの箱を開けながら殺せんせーは言った。理事長はそれを受け取らず、近くの戸棚を開ける。
「殺せんせー、教師をするのはこの学校が初めてですね」
「なぜ、分かります？」
「何となく、素人臭いので。なぜ教師になったか頑なに語らないとか、私が勝ったら教えてくれませんかね」
「………語るまでもない事ですから。
そもそも人に何かを教えたいと欲する時、大きく分ければ理由は2つしかありません。
自分の成功を伝えたい時か、自分の失敗を伝えたい時。
貴方はどちらですか？浅野理事長」
理事長の脳裏には、山奥で教科書を片手に持つ自分自身の姿が蘇った。その姿にはブラックノイズが掛かっていた。
「…さぁ」
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作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
