#１７７ ページ34
僕の言葉に、姉さんと母さんは大きく笑った。
「学秀もそんな冗談言うようになったのね、それは正真正銘あなた達のお父さんよ」
『なんでお父さんじゃなくて兄弟が家族写真に写ってるの？』
「…いや、…だって。そう思っても、仕方ないだろ…」
僕の知る限りのお父さんは、こんな顔を見せたことは無い。
このままこの写真を見なかったら、こんな顔をする人だとは思わなかっただろう。
「…何があったんだ、どうして…お父さんは変わってしまったんだ」
「………とても、悲しい事があったのよ。その直後に…」
『…………』
お母さんの言葉の通り、そこからの写真にお父さんは写っていない。お母さんが撮っているのか、僕や姉さんが運動会で走る姿、入学式や卒業式などのパネルと共に写る姿だけだった。
「…私はね、もう1回撮りたいのよ。家族写真を…」
「……家族写真…」
「4人で、撮りたいとずっと思っているんだけど…きっと、叶わぬ夢よね…」
『…お母さん……』
.
.
.
＿＿＿12月上旬。
ｺﾝｺﾝ…と、ドアが鳴った。
「僕だ、姉さん」
『どうしたの？学秀』
入ってきた学秀の顔は、強ばっていた。その様子を見て私はベッドに座るように促す。
「……いや、いい」
『…そう？』
学秀は、ドアを閉めて私の元へ近づいてきた。
座ったままだから、見上げて学秀の顔を見る。
「…明日から、A組の担任が変わる」
『まさか…』
「ああ。理事長になるらしい」
『ひぇ……』
あの人の教育は、はっきり言って受けたくない。
異様なカリスマ性と、人を操る言葉と眼力。マッハ20の殺せんせーの教育と対等に並ぶほど。
『大丈夫かな、皆…』
「…あの人の教育についていける奴等は、そうはいない。だから恐らくは……」
学秀の握った拳が震えていた。
きっと、榊原くん達のようになってしまう。と言いたいのだろう。
『…そんな…』
「そうなった場合の策は、考えてある。だが僕1人だけじゃ難しい。
姉さん、僕はあの人の教育方針を殺そうと思う」
『…きょ、教育方針を…どうやって……』
私がそう言うと、学秀はﾆｯと笑った。
「大丈夫だ。姉さんは僕を信じて、見ててくれ」
『う、うん…』
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作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
