#１７４ ページ31
「…メイド服、ねぇ」
『どう？可愛いでしょ？』
冗談で、そんな事を言ってみた。どうせ業くんの事だから私の事をからかって来るのだろうとてっきりそう思っていたのに…。
「うん。可愛い」
『ぇ……』
「誰にも見せたくないくらいには可愛いかな」
『…はぁ、ほーんと業くんって何なの…？』
「なんで？可愛いって言われたから返しただけだけどー？」
『それは…確かにそうだね…』
「…そーいえば、「なんか欲しいもの何でも買う」みたいな事言ってたじゃん」
『あ、思いついた？』
「俺とデートしよ。Aちゃんの1日、俺にちょうだい」
『え？』
「デート」
『いや、分かるけど…え？それでいいの？』
「うん、どっか行きたいとこある？」
『うーーん…、あ！動物園!!
最近テレビでレッサーパンダ見たから、動物園行きたいなぁって思ってたの』
「んじゃそこにしようか」
『うん!!楽しみ〜』
「だね」
「…ん？あの2人って付き合い始めたのか？」
「いや、多分…まだなはずだけど…？」
「年頃の男女2人がデートって…これはもう、ね」
「…うん」
.
.
.
＿＿＿椚ヶ丘学園祭 2日目。
『2位かぁ……』
「まぁ1位はイベントものだろ？よく頑張ったよな」
「客数は僅差だったよね！」
学園祭が終わり、総合成績が早々と発表された。
1位 中3-A
2位 高3-A
3位 中3-E
「…なんつーか、E組すごくね？」
「テレビにも出てたしなぁ、俺も食いに行ったぜ」
「美味かったよな〜！美人な先生もいたしよォ」
皆の会話を聞いていると、校内放送を知らせるチャイムが鳴った。
〈3年A組、浅野さん。理事長先生がお呼びです。理事長室まで来てください〉
『(うわぁ…絶対咎められる)
行ってくるね〜、後処理頼みます』
「任せろ！」
理事長室のドアをノックし、入ると学秀や榊原くん達も呼ばれていたみたいだった。
「よく来たね、浅野さん。呼ばれた理由は分かるね？」
『ええ、もちろん』
「学園祭の件についてだ。君達はあの結果を見てどう思う？」
「…僕等は努力の全てを注ぎ込みました、勝利に満足しています」
『私も同じ意見です。1位にはなれませんでしたが、2位という好成績を残せたことに満足しています』
「ほぅ…。随分接戦だったようだが」
「それだけE組に戦略があったという事、圧倒的大差をつけるのはほぼ無理かと」
「違うな」
学秀の言葉を、強い口調で否定した理事長。ピリついた空気が肌を掠めた。
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作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
