#１７０ ページ24
「私なんか子供の頃、短髪しか許されなくて。3年生になって勝手に纏めた時は怒りましたが、これはこれで似合ってるので見逃してやってます」
「…………」
『(…なるほど)』
竹林くんと同じように渚くんも「親の鎖」に縛られているんだ。しかも、かなりの物に。
「そうそう。進路の話でしたわね。私の経験から申しますに、この子の歳で挫折する訳にはいきませんの。椚ヶ丘高校は蛍大合格者も都内有数ですし、中学までで放り出されたら大学も就職も悪影響ですわ。
ですからどうか、この子がE組から出れるようにお力添えを…」
「……渚くんとはちゃんと話し合いを？」
「この子はまだ何も分かってないんです。失敗を経験している親が道を造ってやるのは当然でしょう」
「……母さん、僕は…」
「渚。少し黙っていましょうね」
渚くんの人生は渚くんのもの。それをフォローするのが親というものではないのだろうか。「殺せんせーはどうするつもりなんだろう…」と見るとカツラをがしっと掴んでいた。
「なぜ渚くんが…、今の彼になったのか理解出来ました」
そう言うと、殺せんせーはカツラを取る。それを見た渚くんとお母様は吹き出した。
「「「「『…え？』」」」」
「私、烏間惟臣はヅラなんです!!
お母さん。髪型も高校も大学も親が決めるものじゃない。渚くん本人が決めるものです。渚くんの人生は渚くんのものだ、貴女のコンプレックスを隠すための道具じゃない。
この際ですから担任としてはっきり言います。渚くん自身が望まぬ限り…、E組から出る事は認めません」
顔を真っ赤にさせたお母様がヒステリックに怒鳴り散らし始めた。
「何なのよアンタ!!教師のくせに＿＿＿」
「お、おっかねー…、メチャキレてるぞ。渚の母ちゃん」
「渚!!最近妙に逆らうと思ったらこの烏間ってヅラの担任にいらない事吹き込まれてたのね!!見てなさい!!すぐに私がアンタの目覚まさせてやるから!!」
ｶﾞｼｬｧﾝｯと力強くドアを閉めて渚くんのお母様は校舎から去っていった。
.
.
.
「最も大事なのは、君自身が君の意志をはっきり言う事ですよ」
「……！
でも、今は1人で何も出来ないうちは母さんの2週目でいた方が…」
「何も出来ないわけがない」
そう言いながら殺せんせーは、いつものアカデミック制服に着替えた。
「殺す気があればなんでも出来る。君の人生の1周目はこの教室から始まっているんです」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 89人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
