#１６８ ページ22
11月に入り、生徒会長でなくなって数日。
いつもの様に旧校舎に行くと、何やらテンションが下がった渚くんがいた。
『あらまぁ…。お母様が転級の手続きに来るの…』
「うん、言い出したら聞かないんだ。うちの母親」
『…渚くんは、このクラス出たいの？』
「出たくないよ…、でも」
『なら、大丈夫だよ。まぁ…渚くんのお母様はね…少しだけ癖の強いひとよね』
「うん……」
私の言葉に疑問を持ったのか、杉野くんが頭を傾げて聞いてきた。
「ん？Aちゃん渚の母ちゃんと知り合いなのか？」
『知り合いというか…うーん。たまにいるの、E組に自分の子供が落ちた事を抗議しに来るご両親がね…』
「理事長に言うのも怖いし、かと言って同世代の浅野クンに言っても…なら年上のAちゃんに言えばいけるかもみたいな？」
『そんな感じだよ、業くん』
「…大変なんだね、理事長の娘も」
『うーん。そうだね』
カエデちゃんの言葉に頷く私。
『でも私の言葉でクラス復帰出来てたら、そんな苦労しないよね』
「確かにな」
「そうだねぇ…」
「殺せんせー、任せとけって言うんだけど…」
「うーん、三者面談であの不審さが怪しまれないわけない…」
「例外はいたけどねー、Aちゃん」
『え？』
業くんがニヤニヤしながら聞いてきた。
「渚の母ちゃんがAちゃん並に抜けてるのは思えんしなぁ。1回家に遊びに行った時見たけどさ、わりとキツい反応されたよな」
「あー、そうだったね」
「じゃあ、私が代わりにやってやる？担任役」
いつの間にか教室に入ってきていたイリーナが担任役を買って出た。
「おー！ビッチ先生か!!」
「まず人間だし、あのタコとカラスマの次にあんたらの事知ってるわよ」
「じゃあちょっと予行練習してみようよ」
三者面談の形式で、イリーナが椅子に座りその向かいにメグちゃんと渚くんが並んで座った。
「担任として最も大切にしていることは？」
「…そうですねぇ。あえて言うなら一体感ですわお母様」
「おー、それっぽいじゃん」
『いい感じだね』
「じゃあ、うちの渚にはどういった教育方針を？」
その質問がダメだったのか、イリーナがダメだったのか。
おそらく後者だと思うがとんでもない答えが返ってきた。
「まず渚くんにはキスで安易に舌を使わないよう指導しています」
『ん？』
「まず唇の力を抜いて数度合わせてるうちに、相手の唇からも緊張感が消え柔らかくなります」
『んん!?』
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作者名：ゆあ | 作成日時：2023年10月30日 18時
