-3- 祭前日に登場した探偵※捏造注意 ページ5
「光、神田Aを見なかったか?」
椅子が引かれる音、女子の笑い声、チョークと黒板がぶつかり合う音__様々な音が混じり合う室内で、降谷零は自席に着席する友人に声をかけた。
「見てないけど……あぁ、神田さんなら多分図書室かな」
友人、日野光__後に警視庁公安部に所属することになる男__は降谷にそう返答する。
「図書室?」
「神田は図書委員。今日の朝、扉に図書室当番の札が掛かってたから多分いるはず」
「今日の図書室は明日が文化祭だからって理由で開いてないぞ」
小中高と秋の予定表には『祭』か『フェスティバル』か『大会』の文字で大半を占めている。勿論降谷の属する高校も例外ではない。その『祭』の第一弾こそ、明日行われる文化祭である。
その文化祭では部活動やクラスなど、とにかく色々な形で参加することになっている。の、だが。
「A組の出し物を自主制作映画にしようと言い出したのはどこのどいつだ」
「実行委員も楽な仕事じゃないねえ、今日もお疲れ様です」
「おい」
『文化祭の歩き方』と称したしおりの二年A組の項目にはしっかりと『【自主製作映画】偽造の祭り』と書かれている。
蛇足だが、映画の案を出したのは日野である。しかし決めた人間がこのクラス全員では仕方がないと降谷も一応は考えている。
ところがどっこい。
実行委員は各クラスから一名推薦で選ばれ、運営を任される。それには運悪く降谷が、つまり降谷はこのクラスのまとめ役、映画制作のリーダーになってしまったというわけである。ちなみに脚本は例の神田Aが担当した。
「制作はもう済んでるんだから、一息ついたらどうだ」
「いや、」
「えっ。何、まだ終わってないのか?」
困惑した表情を浮かべる日野。この男は何のために神田の居場所を聞いたと思っているのだろう。
「チラシは誰が担当になってる」
「え、俺?」
降谷はそれを聞いて、一つ間を置いてから苦労の息を吐いた。
チラシ担当は脚本担当者と同一人物。言わずもがな、“彼女”である。
降谷は彼から視線を外し生徒の行き交っている廊下をちらりと見た。
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雨屋まほろ(プロフ) - 綺藤さん» 好んで読んでいただけたこと、大変嬉しく思います。すすんで読書をしてこなかったツケが回ってきたのか執筆が滞ってしまうことも多々あるのですがそのお言葉を糧にして執筆、頑張りたいと思います。ありがとうございました。 (2017年4月5日 17時) (レス) id: 8301c7292f (このIDを非表示/違反報告)
綺藤(プロフ) - 前作から読ませていただいており、作者様の作品が大好きです!!更新頑張ってくださいね!! (2017年4月4日 22時) (レス) id: 860dd52b69 (このIDを非表示/違反報告)
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