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Aは妙なところで優しいこの男のことを、いたく気に入ってしまっていた。だから彼女は今度こそ松田が自分の遥か遠くに行ってしまうような気ばかりしているのだろう。
「……お前はまだ知らねえだろうが、人っつーのは自分の前から簡単に消えちまう。何も残してやれなかった代わりとして、仇くらいはとらせてくれよ」
「でも、」
「安心しろ、簡単に死ぬほど俺はヤワじゃねえからよ」
そのときAは自分が情けなく思えた。泣いてしまいそうなくらい、死んでしまいそうなくらいには。
背に伸ばした手が宙を切る。結局彼には届かない。ああ、届かない。もう、とどかない。
百人の群衆がいたとして、彼は果たしてその中から何人、誰を見つけられるのだろうか。もっとも、見つけられた者以外は彼には見えてすらいないのかもしれないが。
end/透明人間
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夢主不幸無双の未来しか見えない。お蔵入り作品のはずがここで公開。
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雨屋まほろ(プロフ) - 綺藤さん» 好んで読んでいただけたこと、大変嬉しく思います。すすんで読書をしてこなかったツケが回ってきたのか執筆が滞ってしまうことも多々あるのですがそのお言葉を糧にして執筆、頑張りたいと思います。ありがとうございました。 (2017年4月5日 17時) (レス) id: 8301c7292f (このIDを非表示/違反報告)
綺藤(プロフ) - 前作から読ませていただいており、作者様の作品が大好きです!!更新頑張ってくださいね!! (2017年4月4日 22時) (レス) id: 860dd52b69 (このIDを非表示/違反報告)
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