94.無事 ページ45
風見さん達の車が見えなくなった時、身体が暖かいものに包まれた。
「よかった、無事で…ッ」
『…心配かけて、ごめん。』
一応部下たちの手前、弱い自分を見せたくなかったのだろう。私の身体を抱き締める腕は僅かに震えている。
『でも、よくここがわかったね。』
彼の肩口に押し付けられていた顔を離して問い掛ける。
私と男がいたのは大型トラックのコンテナの中。
きっと男が所有していたんだろう。
「無事かどうかが気になって、組織の仕事が片付いてからすぐにお前に連絡したんだ。けどずっと繋がらなくて…まさかと思って風見にお前の携帯のGPSの場所を調べさせたんだ。」
医者である私は、普段から緊急連絡などに対応できるようにしているから中々電話に出ないなんて事はない。そこまで察して動いてくれたのは彼の頭の回転の速さのおかげだろう。
『それで私がまだ杯戸町にいるって分かって、急いで来てくれたんだ…零くんの車のエンジン音、ちゃんと聞こえたよ。』
男がシャツのボタンを外した時、うっすらと聞こえたのは零くんの車のエンジン音だった。だから諦めずにいられた。
「……お前の携帯が生きてたからよかったよ…。」
確かに、私のスマホが2つとも壊されてしまっていたら今頃どうなっていただろう。
けど目が覚めてから、まだ自分のポケットにスマホがあることに気付いて運が良かったと思った。
『もう1つのスマホがあるって分かった時点で、零くんならそのGPSの位置を割り出して助けてくれる。そう信じてた。』
「……もし俺が見つけられなかったり、スマホが両方壊されてたらどうしてたんだ。」
『その時は隙を見て逃げるつもりだった。あいつに蹴られた時に床が揺れた感じがしたから、自分たちがトラックのコンテナにいるっていうのは分かってたし。でも結果的に見つけてくれたから…ありがとう、零くん。』
目を見て笑って言えば、再び顔を肩口に押し付けられる。
腰に回る腕がちょっとだけ苦しい。
「…ッお前に何かあったらと、怖くて仕方なかったんだ。」
『…うん』
「でも、お前の方が余程怖かっただろう?」
『あ……』
そう言って零くんは私に視線を合わせる。
そして手を取られ、その時に初めて自分の手が震えていたことに気付いた。
「無理に笑うな。結果的に助かったとはいえ犯 されかけたんだ。怖くないわけがない。」
『ッ…』
怖かった。不安で堪らなかった。
どんなにそれを隠しても、零くんにはバレバレだった。
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YuasA(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます!次回も楽しんで貰えるよう頑張ります! (2022年1月19日 0時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
みん - 最高過ぎます!毎回楽しみです!!ありがとうございます!ありがとうございます!!! (2022年1月18日 23時) (レス) @page50 id: 0b35b5e05a (このIDを非表示/違反報告)
YuasA(プロフ) - あかねさん» ありがとうございます!もっとニヤニヤできる作品に出来るよう頑張ります! (2022年1月18日 22時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 最高です!ニヤニヤが止まりません… (2022年1月18日 20時) (レス) @page49 id: bf2afdf343 (このIDを非表示/違反報告)
YuasA(プロフ) - ぱるむさん» ありがとうございます!次からも面白い作品になるよう頑張ります! (2022年1月8日 16時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YuasA | 作成日時:2022年1月6日 19時