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81.相談事 ページ32

「佐伯先生、工藤先生、この度は本当にお世話になりました。」

「ッお世話になりました…」


深々と頭を下げて、背を向けて帰っていく母娘。
…最後まで、あの娘の笑顔を見ることができなかった。

これからあの娘は、ずっと傷を負って生きていく。
まだたった17歳なのに。


「…アウスは、軽く考える人もいれば重く考える人もいる。けど私たち医者は希望された通りに処置をするしかできない。……やり切れないけどね。」

『…はい』


本来ならば望まれて授かられるはずだった命。
音のあるその1つの命を手離す選択をするのは、どれほどの勇気が必要な事だろうか。


「…あ、尚美さん!A先生!」


玄関から産婦人科医局に戻る途中で、白のワンピースに薄手のピンクのカーディガンを羽織った小柄な女の子とバッタリ会った。


「あれ、沙羅ちゃんもう来てたの?予定よりちょっと早いね。」

「今日はサークル休みだったのすっかり忘れてて…だからちょっと早めに来ちゃった!」

『そう言えば今日は予定日が決まるんだもんね。』

「うん!」


彼女は佐伯先生の姪御さんで、大学2年生の佐伯沙羅ちゃん。
3週間前に妊娠が発覚し、今日は予定日を決定する為に産婦人科を予約していた。


「それなら私先に外来行って準備してくるね。沙羅ちゃんはナースが呼ぶまで待合でね。」

「はーい!」


佐伯先生はそのまま医局の奥に入っていき、私も沙羅ちゃんと別れて病棟の診察に行こうとしたが、袖を引っ張られる感覚に振り返る。


「…あの、A先生。」

『?どうかした?』

「…ちょっと相談があって…先生今日何時に上がるの…?」


不安げに聞いてくる沙羅ちゃんは、先程の元気さが嘘のように消え去っていた。
私は頭の中で自分のスケジュールを思い出す。
…今日は待機じゃないし当直でもないから……


『今日は何もなければ15時には上がりだから、診察終わってからちょっと待ってもらうことになっちゃうけど…それでも大丈夫?』

「うん、大丈夫…1階の喫茶店で待ってます。」

『分かったわ。』


不安げに俯く沙羅ちゃんの頭を一撫でして、沙羅ちゃんを産婦人科の待合に行くのを見送る。

相談…叔母である佐伯先生にするのは難しい内容なのかな…?


とりあえず、今は自分の仕事に集中して、きっちり15時に上がれるようにしないと。

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YuasA(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます!次回も楽しんで貰えるよう頑張ります! (2022年1月19日 0時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
みん - 最高過ぎます!毎回楽しみです!!ありがとうございます!ありがとうございます!!! (2022年1月18日 23時) (レス) @page50 id: 0b35b5e05a (このIDを非表示/違反報告)
YuasA(プロフ) - あかねさん» ありがとうございます!もっとニヤニヤできる作品に出来るよう頑張ります! (2022年1月18日 22時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 最高です!ニヤニヤが止まりません… (2022年1月18日 20時) (レス) @page49 id: bf2afdf343 (このIDを非表示/違反報告)
YuasA(プロフ) - ぱるむさん» ありがとうございます!次からも面白い作品になるよう頑張ります! (2022年1月8日 16時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:YuasA | 作成日時:2022年1月6日 19時

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